ソファで報告書を読んでいるサボを私はベッドから見ていて、枕から微かに香るサボの匂いに心は少し燃え上がった。端的に言うとムラムラした。
そんな私の心情にサボは気づかない。心情には気づかないが、私の視線に気づいた彼はおかしそうに笑う。

「暇そうだな」

ええ、暇ですよ、あなたが私にかまってくれないから。
少し不満げな顔をしてから体を起こすと、サボは読んでいた報告書をテーブルにバサッと放り両手を広げた。そして微笑んだままこう言う。

「おいで」

ずるい。
本来ならサボが来るべきなのだ、サボを所望するこの私の火照りを慰めに、ベッドへ。
そうは言ってもその両手に抗えるほど私は我慢強くなく、一応不満げな顔は保ったままサボの太ももに乗った。膝をソファに沈めれば、サボがぐんと近づいたように感じる。
サボはそんな私を抱きしめて改めて「ただいま」と言うので私はなんだか嬉しくなって「おかえりなさい」と優しい声で応えてしまったのだった。

「髪、切ったんだな」
「うん、伸びたから」

髪の毛のことを言われて抱きついてた体勢から少し離れるとサボは肩までになった私の髪の毛を少し取って、靡かせた。
微笑みを浮かべる唇にキスをしてやろうと思ったがその前にサボの目にかかった金色の髪が私の引き寄せた。とても綺麗で、とても愛おしかった。
左目を隠すような髪の毛をゆっくり払うと、サボは「おい」と少し嫌そうな顔をする。

「痛い?」
「いや、……そんな、見せるもんじゃねぇから」

そう言うとサボは頭を少し振ってまた左目を隠してしまった。いや、正確には左目の傷だ。
髪の毛を伸ばしている理由もこの傷を隠すためだと聞いたことがある。何をそんなに気にするのだろう、と思ったがこの領域にはきっと踏み込んではいけないのだと思う。
サボが少し俯き気味になってしまったので、たまらず金色の髪の毛の上から左目にキスをした。
そのまま流れるようにサボの唇を奪うと、サボもそれに応えて私の腰を抱く。キスをしながらゆっくりとソファに体を押し倒されて私は満足に思った。

「ずっとサボが欲しかったの」
「おれはお前のだよ」

嘘だ、左目の傷を見せてくれないくせに。
私は全てがあなたのものなんだけどなぁ。
でも、一瞬だけ見せた泣きそうな顔はきっと私だけのものなんだろう。泣かせるつもりはなかったんだよ。ごめんね。あなたの綺麗な瞳を見たかっただけなんだ。欲張りでごめんね。
下から見上げるサボの左目の傷は、隠すことを忘れたように私からよく見えた。私は欲張りなので、サボの身体を貪りながら誰よりも脳裏に焼き付けてやろうとずっとずっとサボの瞳を見ている。サボはいつもより興奮しているように見えた。



20180206
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -