任務から帰ってきたあとのサボは、まあまあ忙しい。今回は一週間空けていただけだったがそれでも参謀総長としての仕事はしっかりと溜まっているようだった。
サボのいる机にはひっきりなしに人や書類がやってきて、サボはそれをテキパキとこなしていく。あの若さで革命軍No.2と言われる男だけあって、みんながサボを頼っていた。
私はそんなサボをたまにチラリと見たり、見なかったり、サボが一瞬席を外した隙にコーヒーとチョコを置いてみたり、とりあえず、邪魔はしないでおいた。コーヒーとチョコはサボが席に戻ってきた後、あっという間にサボの胃袋に入ってちょっと笑った。
夕飯の時間、食堂にサボはいなかった。どうやらやっぱり忙しいらしい。私は夕飯を食べてお風呂に入ってから部屋に戻り、図書室から持ってきた本を読む。今日はサボと話してないなぁ、なんてぼんやり思いながら夜は勝手に更けていく。

コンコン、とノックがされて本に集中していた私は分かりやすくビビった。誰もいないのだから恥ずかしがる必要はないが、少し恥ずかしい。
ドキドキしながらも冷静を装ってドアに向けて「はい」と声をかければサボが入ってきた。寝巻きではなく、昼間も着ていた服だったから多分仕事がさっき終わったのだろう。顔も笑顔だけど心なしか疲れている。

「お疲れ様。大丈夫?」
「あぁ、疲れた」
「うん、お疲れ様」

椅子から立ち上がってサボの高い肩に手を回すと、サボはぽすんと私の肩に頭を預けた。甘えるような仕草がとても可愛かった。サボからは少しタバコの香りがする。会議中に誰かの煙を浴びたのだろう。

「昼間」
「うん?」
「コーヒー、ナマエだろ」
「チョコ付きのは私だね」
「知ってるよ」
「なにそれ」
「サンキュ」
「うん」

ぽんぽん、とサボの頭を撫でたらサボの髪の毛からやっぱりタバコの香りがした。そうか、まだお風呂にも入ってないんだよな、可哀想に。

「ご飯は?」
「さっき食ってきたよ。今から風呂入って」

そうサボは言うと、私の腰に手を回した。サボは手袋をしているのに、なぜだか腰がとても熱くなった気がした。急に、心臓も熱くなる。
サボはそんな私の若い感情に気づかず、私の肩から頭を上げて「え」と私が言う間も無くキスをした。生温かい舌が侵入してきてべろりと私の舌をひと撫でして、押し付けるように唇が小さくリップ音を残す。
急なキスにびっくりして頬が熱くなるのを感じた。サボは私の頬を見て笑い、念を押すように一言。

「まだ寝るなよ?」



帰ってきたサボは髪の毛が少し濡れたままだった。「風邪ひくよ」と言う前にベッドに二人で倒れこんで、少し冷たいサボの前髪が私の顔に引っ付いた。さっきのタバコの香りがなくなって、シャンプーの香りがしたから何故かそれがとても可愛く思えて、何故か泣きそうになった。


20180215
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