弦一郎は真面目だ。真面目すぎてたまに頭おかしいのではと思うくらいだ。多分弦一郎からしてみれば私の方が頭がおかしいし一般的に真面目の方が好ましいのは分かるけど、そんなに真面目で大丈夫?なんて思ったりもする。
弦一郎と私は小学生の頃からの付き合いで、中3で付き合い始めて、たまーに部活がないときとかなんかは一緒に帰る。以前、私が「手を繋ぎたい」と駄々をこねた時まあまあ一悶着あって最終的に弦一郎が私の熱意を汲んだのか「分かった、俺も次回からは努力しよう」と折れた。
それから、毎回手を繋いでいる。
努力って何となく「できたらする」みたいなニュアンスかと思ったら弦一郎は真面目なので腹をくくったからには決まりごとのようにそれを守った。
もちろん私はそれが嬉しい。弦一郎は小学生の頃からぐんぐん背が伸びて大人みたいで、手のひらだって私が最初びっくりするほど大きかった。恋人繋ぎなんてことはまだしたことないけど、それでも弦一郎の手に包まれてる感覚と、張り付いた手のひらのマメを知っていることがとても嬉しかった。

「弦一郎、次の試合はいつなの?」
「来週の土曜日だ」
「うちの学校でするの?観に行っていい?」
「ただの練習試合だぞ」
「それでもいいよ、邪魔しないし」
「お前が来ているのを知っているのに俺が無視するのもおかしな話だろう。昼飯の時間なら少し空く」
「……じゃあ、差し入れ持っていく」
「すまない」

別に、無視したっていいのになぁ、私が勝手に観に行くだけなんだから、と弦一郎の真面目さに笑った。恋人ってそういうもの、みたいな定義が弦一郎の中にあるんだろう。私は弦一郎が嫌じゃないのなら徹底的にそれに甘えることにしている。
少しニヤニヤしているのを隠すように下を向くと、靴紐が解けかけていた。「ごめん、靴紐」と弦一郎の手を離してしゃがむと、弦一郎は一歩先で立ち止まった。
靴紐を解いて、結んでぐるっと回して、きゅ。
手早く、最後だけ力を込めて靴紐を結んで立ち上がると弦一郎は私に手を差し伸べていた。
だから、もう、このクソ真面目。
照れ臭くて笑いながら弦一郎の手を掴んだ。また二人で歩き出すと、さっきより弦一郎が近い距離にいるような気がした。もうあと少しで家に着いちゃうな、と思っていたら弦一郎が口を開いた。

「明日は小テストだ、予習を忘れるなよ」

私はそれを「はぁい」と適当に流しながら、靴紐、もっとゆるく結べばよかったかなぁなんて考えている。クソ真面目な弦一郎にはきっと思いもつかないだろう。


20180216
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