久しぶりに寄った陸地で、突然の大雨だった。街に買い物に出かけていた私とサンジくんは傘も持っていなかったので買い物袋を揺らして人気のない場所で雨宿りをすることにする。
 外界の何もかもを遮断するようにざあざあ降る雨と、地の底から響くようにごろごろ鳴る雷に追いやられたみたいに私たちは肩を寄せ合う。サンジくんのしっかりした肩に体を預ければ、サンジくんが空を見上げて呟いた。

「すげぇ雨だ」
「ね。こんなの久しぶり」
「陸地も久しぶりだってのに」
「まぁでも、たまにはいいね」
「二人きりだし?」

 そう言うと、サンジくんは私の手と自分の手を重ねる。確かに、こんなにも隔離されたような場所で、うるさいようで静かな場所で二人きりになるのは久しぶりだった。あんなに楽しく騒がしい海賊団に入っていたら当たり前なんだけれども。

「ナマエちゃん」

 サンジくんは真面目な顔をして私の手をぎゅっと握り、顔を近づけてきた。彼の持っていた買い物袋がばさっと落ちて、その買い物袋を持っていた手が私の腰に添えられる。そしてゆっくり、優しく、一秒二秒と短い時間なのに噛みしめるみたいなキスをした。

「…サンジくん」
「うん?」
「……この街、誰もいないみたいだね」

 絶え間なくざあざあ降る雨に全部が遮られて、まるでここ一帯には私とサンジくんしかいないみたいだった。握られた手をぎゅっと握り返すと、サンジくんは私の腰に添えた手に力を入れる。

「…じゃあ何をしてもいい?」
「………それはまた別かな。何よ、ロマンチストのくせに」
「その前に男だから」
「んっ」

 憎まれ口を叩いたら唇をふさがれた。言葉を発しようとすると、その前にまたキスをされて、サンジくんがその合間に言葉を紡ぐ。

「あんなむさ苦しいところで毎晩寝てて」
「ん」
「本当は君の胸の中で眠りたいのに」
「ちょっ」
「ナマエ、」

 ドーーーーーン!!!!!
 と、本当に、びっくりする、重たくて、大きくて、何かが破裂するような音だった。落雷で空気が破裂したのだと理解し、サンジくんを見たらサンジくんもびっくりしたような顔で空を見上げていた。
 その顔が可愛くて可愛くて。
 こっちに向けている頬にキスをしたら、サンジくんは真っ赤になって私に顔を向けた。さっきまで甘い言葉を吐いてたとは思えない顔とあんぐり開けた口、やっぱり可愛い。
 くそ、と小さく悔しそうに呟いたサンジくんは私の目を見据える。わ、かっこいい。

「…まだ帰さねぇから」

 そう言ってサンジくんは私の額に自分の額をくっつけた。こんなこと、船の中じゃしたことないなぁ、と思いながら雷の音と雨の音に耳を澄ましたけれどサンジくんの「好きだ」という声しか聞こえなかった。
 サンジくん、私、まだ帰りたくないよ。


20130702
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -