階段を跳ねるようにリズミカルに降りて行けば、私の目の前にあるもしゃもしゃの白い天パが「ご機嫌だねぇ」と呑気そうに喋った。それが何だか嬉しくて、ニヤニヤしながら私は答える。声だって高らかだ。
「何たってデートだからね!」
「いい歳してはしゃいでんじゃねーよ」
言葉は冷たいものの、銀ちゃんの口調も楽しそうだった。さすが天邪鬼。
そもそもこのご機嫌は「ナマエちゃん、スーパーまでデートと行くかィ」という銀ちゃんの冗談から始まったのだ。
ただ99円の卵(お一人様限り)を買いに行くだけだというのに、言い方一つでこんなに舞い上がってしまう私はなんて可愛いのだろうか!ねぇ銀ちゃん!そう思うからあなたも階段を降りながらふわふわの天パをそんなにご機嫌に揺らすのでしょう!
調子も乗ってきて、ニヤニヤする私はやっぱりご機嫌に銀ちゃんの背中を人差し指で可愛く突ついた。
「ねぇ、デートなんだから手繋いで行こうよ」
「バッカ、んなガキみてーなことするかよ」
「するよ、デートだもんっ」
反論すれば、一足先に最後の階段を降りた銀ちゃんは振り返り、呆れたような可笑しいような、でも嬉しいような天邪鬼な笑顔で私に手を差し伸べた。
そして一言。
「何がそんなに楽しいのかねぇ」
銀ちゃんにそっくりそのままお返ししたいねぇ。
そんな感想は弾む胸にしまって、にっこり笑って銀ちゃんの手を掴んだ。そのまま、ほっ、と銀ちゃんが軽く引っ張ってくれたから下から二番目の段からジャンプ!銀ちゃんの笑顔に見守られて着地。
「んじゃま、行きますか」
「行きますか!」
「声がでけーよ」
「ねぇねぇ、遠回りしよーよ!」
「ご機嫌だねィ、お嬢さん」
何がそんなに楽しいのかねぇ、ともう一度銀ちゃんが言うからぎゅっと手に力を入れて、銀ちゃんの肩に頭を軽くぶつけて言ってやった。
「銀ちゃんと同じ理由かな!」
「んなことありません〜」
ご機嫌な天邪鬼は私に頭突きをすると、フッと笑う。さぁ今日もやいやい悪口言いながら、おてて繋いで99円の卵を買いに行こうか、天邪鬼。
20130701