「お願いサンジくん、マイダーリン、男前、私にも、私にもデザートを…!」
「てめぇがダイエットするっつーから手伝ってやってんだろーが、甘えるんじゃねぇ」
「サンジいいいいい」
「んナミすゎーん!ロビンちゅぁーん!今日はイチゴのタルトとキャラメルミルクティーだよー!」
「まぁなんというか…がんばれ」
「私もサイボーグになれたなら…!」

 フランキーに慰められ、私は芝生に膝をついた。
 確かに、確かにコックであるサンジにダイエットの協力を頼んだのは私なのだ。「そんな理由でおれの料理を食わねぇ気か」と冷静に辛辣に言われたが、それでも痩せたかった私は必死にサンジを説得し、今に至る。つまり、不満なサンジを説得させた分、サンジは厳しい。めちゃくちゃ厳しい。スーパーに厳しい。

「別に気にするほどでもねぇじゃねぇか、サンジもそう言ってんだろ?」
「男にこの気持ちは分からないの!」
「だろうな。何にしろ、そんな理由で心を込めて作った料理を恋人に拒否されるサンジの気持ち…心中お察しするぜ」
「そ、そんな言い方しなくたって…!」
「愛って…なんだろうな」
「壮大だな!こっちが聞きたいわ!」

 あぁ本当に、愛とはなんぞや。
 勝手だけど、自分からダイエットすると言っておきながら、サンジを無理やり説き伏せておきながら、ああやって冷たく対応されるのに少し傷ついていた。口が悪いのいつものことだけど、彼は基本的に優しいのだ。怒っても「たく、しょうがねぇなぁ」と怒った顔をしながら頭を撫でてくれるような人なのだ。

「どこ行くんだ?」
「キッチン。みんなが美味しそうにデザート食べてるのを見ちゃいられないもん、コーヒーでも飲むよ」
「ま、懸命だな。うめぇ」
「黙って食え変態!」
「そんなに褒めるな」

 悪態さえ通用せず、フランキーに思い切り舌を出して返せば、サンジと目が合った。別にサンジにしたわけじゃないのに、サンジも「べ」と返してくるから「もー!」となって、逃げるようにキッチンへ入る。
 うっ、タルトのいい匂い。
 失敗だったかもしれない、さっきまでサンジが作っていたタルトの香ばしい香りとイチゴの甘い香りがキッチンを覆っていて、なんだか泣きそうになった。
 あぁ、サンジのタルト食べたい、満足そうに笑うサンジの笑顔も見たい、ダイエットすると言った時から怒られてばかりだ。

「何か用ですか、マドモアゼル」

 テーブルに項垂れていたら、いつの間にか帰ってきていたサンジに声をかけられた。少し嫌味の入った言葉に振り向けば「なんつー顔してんだよ」と呆れたような顔をする。

「だってぇ…」
「だってじゃねぇよ」
「うう…」
「大体、おれの料理は栄養はもちろんカロリーだって考えられてんだよ、ダイエットする必要がどこに」
「だってナミやロビンの方が細いもん!」
「…おれは別に気にしちゃ」
「いやサンジのためとかじゃなくて」
「よし、どうしても三枚にオロされてぇんだな」
「あー!ごめん!ごめん!つい本音が!」
「クソ可愛くねぇ」

 ちっ、とサンジは舌打ちをすると、灰皿に煙草を押し付けた。あーまた怒らせちゃった、まぁ、私のせいなんだけど、この女の子の気持ちは分かってくれまいか、マイダーリン。

「コーヒーか?」
「…うん、コーヒー」
「ミルク…も砂糖もいらねぇな、お前には」
「み、ミルクくらいなら…」
「…」
「睨まないでよう…!」
「…」
「ちゅ、ちゅーしてあげるからっ」
「…まじか」
「えっ」
「えっ」

 意外な反応に驚くと、サンジも驚いた。その反応にまた驚きそうになったけど、ぱちくりとサンジを見ればサンジは怒ったように「純粋な男心をてめぇ」というから、慌てて答える。

「別にそんなつもりじゃ、ていうか、ちゅーしたらミルク入れてくれるの?」
「おう、いいぜ」
「え、じゃあ」

 キッチンに入れば、サンジがむすっとした顔のまま手を広げていた。顔と行動が一致してない気がして笑ってサンジの腕の中に入ると、私がするより先にサンジの唇が降ってきた。

「わっ」
「これで砂糖一粒」

 そんな意地悪なことを言うから、見つかったら恥ずかしいじゃすまされないくらいにキスをしてやった。といっても途中からサンジに主導権が渡ったのだが、終わって浅い息のまま「これで、ひとつまみくらい?」と聞けばサンジが真剣な目をしてこう言うのだった。

「これ以上だとタルトなんだが…どうする?マドモアゼル」


ひとつまみだけよ


「あ、それは太るからいい」
「ナマエちゃん…!」
「何で泣くの!?」
「しょうがねぇだろ腹立つのに好きなんだよ!」
「もーダーリン愛してるよ」
「おれもだちくしょう、クソハニー!」


20130711
title by 夏さま
ありがとうございました!
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