▼ 誕生日プレゼント4
トムは鳥の襲撃事件をアビーがやったんじゃないかと言っていたが、私にはどうしてもそうは思えなかった。別にこれといった根拠はない。ただ、トムを見ているとどうしても思ってしまう。彼は特別だ……って。完全に友達の贔屓目かもしれない。
それからも度々不思議なことが起こり、トムと私はその度にお互いを原因だと思って口喧嘩をした。かと思えば、くだらないことでも喧嘩もしたけど……雨がしとしと降っているのかパラパラ降っているかで大喧嘩した事もあった。トムといると時間があっという間にすぎて、早送りのように月日が流れていく。そう、気がつけば1年経っていて、また年を越そうとしていた。
トムの誕生日、トムが独りぼっちになった日、私が捨てられた日――私とトムが出会った日。
「去年は、トムの誕生日なのに泣いててごめんね」
「別に良いよ、プレゼントも貰ったし」
「え?」
「忘れたの? 魔法のハンカチをくれたじゃないか。大切なものだろ、タイミングがなかったけど、返して欲しかったら返すよ」
「ふふ、そうだった。でもね、あの日からトムが一緒だから泣いてないんだ。だから、魔法のハンカチはいらないの。トムが持ってて」
「……僕が泣き虫だって言いたいの?」
「……違うよ?」
「アビーなんかあっち行け」
少し考えてから否定すれば、トムが拗ねてしまったのかそっぽを向いてしまったのでより近づいて隣に座る。あの日から一年経ったのに、庭は変わっていない。大きな木が一本そびえ立つだけ、寂しい庭だと思う。
「トムが私の誕生日に手紙と押し花の栞をくれたでしょ? アビーが大好きっていう手紙、覚えてる?」
「そんなの書いてない! アビーは唯一の友達だって書いたんだ!」
「大好きってことじゃない!」
「違うって」
「違わないわ!」
喧嘩してるのもバカらしくて、私たちはクスクス笑った。そして、懐から取り出した紙袋を渡す。何だいこれと訝しむトムを早く開けてと促せば、中から出てきたのは一つの指輪。トムは手にはめてみたが、まだまだ大きいようですぐ抜けてしまう。
「指輪をくれるの?」
「これはね、おばあちゃんが此処に来る前にくれたの。ペアになってるから、片方を一番大事な人にあげなさいって」
そう言って、胸元にネックレスのようにして身につけていた指輪を見せれば、トムは沸騰したように顔が赤くなった。
「僕が、君の一番大事な人? ……ありがとう」
頬を赤く染めて微笑んだトムの顔が綺麗で、思わず見ほれた。私の綺麗なお友達。私の家族。嬉しそうに指輪を嵌めて、ぶかぶかでサイズの合わないそれを大事そうに見つめている私の特別。
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