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▼ 誕生日プレゼント3

「あんま調子乗ってんじゃねえぞ。クッキー独り占めしたらしいじゃねえか」

 私たちの笑みがさっと引いた。いつの間に入ったのだろう、部屋の入り口に扉を背にして立つビリーに私は思わず後ずさった。トムがその時私を庇うように私の前に出る。

 そのトムの行動がまた癪に触ったらしい。ビリーは顔をしかめてドスンドスンと此方へ向かってくる。手を振りかぶり、思わず私は顔を手で覆った。鈍い音とトムの呻く声がする。やめてと叫んでもその音はもう一度した。

 恐る恐る手を外し、意を決してビリーの腕にしがみつこうと踏み出したその時だった。部屋に鳥が何羽も乱入して来た。

「え?」

 この声は私が発したのかビリーが発したのか、それともトムが発したのか分からない。ただ、私たちはその光景を呆然と見ていた。

 部屋に侵入した鳥はビリーめがけて突進し、ビリーはあちこち突かれたりする羽目になった。悲鳴をあげて部屋からビリーが出て行くと鳥もそれに倣い、次第に施設のあちこちで悲鳴が行き交った。

「今のはアビーがしたの?」

 そう言って振り返ったトムの瞳はいつか見たときのように赤く染まっていた。あの時と違ったのは涙で濡れていないことか。初めてじっくりと見る赤い瞳に私は魅入られ、ろくな答えもせずただ手をトムの顔に伸ばした。

「どうしたっていうんだい」

「トムの目、赤くなってる」

「……別に泣かなかったよ」

「違うの、色が黒から赤になってて……すごく綺麗」

「色が変わるなんて気味悪くない?」

「ううん、凄く素敵だわ。さっきは守ってくれて有難うトム」

 にっこりと微笑んで礼を告げれば、トムは照れたように目を逸らしそっぽを向いた。瞳はいつの間にか黒に戻っているが、代わりに彼の頬が赤く染まった。

「だって、君は、僕の大切な同盟仲間だからね」

 不思議なことに、鳥がどこから部屋に入って来たのか分からずじまいだった。私たちの背後から現れたのだから、唯一の入り口である扉でもなければ、窓は完全に鍵まで閉まっていたのだから。

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