▼ 入学の案内4
学用品を買う魔法界のお金を受け取り、ダイアゴン横丁への行き方だけを教わる。手伝いの申し出をきっぱりと断っておいて太々しいが、ダンブルドアに好感を持てないので、いいぞもっとやれとさえ思う。
孤児院から「漏れ鍋」への行き方、トムというバーテンダーの情報を教わる。汽車の切符やら学用品の細かいリストが入った封筒も貰った。
「アビー、君はよければ私が手伝お――」
「呼ばないで! ……そう呼んでいいのは、トムだけなんです。だから――」
「ああ、すまなかった。アビゲイルや、君もトムと行くかい?」
「彼女は僕といきます」
私に代わって当然のように頷いたトムは、ダンブルドアが持っていたもう一つのお金の入った革袋と封筒を受け取った。最後に、トムがダンブルドアに差し出された手を握り握手を交わす。
私は右手がトムに捕まっていたため、ダンブルドアとは握手しなかった。トムが最後に、ダンブルドアと握手しながらいった。
「僕らは蛇と話ができる。向こうから僕に囁きかけてくる。魔法使いにとって当たり前なの?」
トムは懲りずに威嚇したいらしい。隠しダネを言って、圧倒しようとしてるのだろう。見え透いた思考が可愛くて思わず笑う。ダンブルドアが一瞬迷ったのち稀だと答えたのでトムは満足げだった。ダンブルドアが興味深けに私とトムを見つめるので、私は首を振った。
「トムだけよ、元々話せるの。私はトムに教えてもらっただけ……さよなら先生」
「さようなら、アビゲイル、トム。ホグワーツで会おう」
そう言ってダンブルドアが扉から出て行く。トムはダンブルドアが視界から消えた瞬間、私を強く抱きしめた。目をキラキラと期待に輝かせていて、こういう年相応なところをダンブルドアに見せたら気に入られていたかもしれないのになあとどこか頭の片隅で思った。
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