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▼ 入学の案内3

 箪笥とダンブルドアを交互に見つめ、それから貪欲な表情で杖を指差した。そうだ、あの老夫婦が持っていた棒切れも杖だったんだろう。ダンブルドアが持っているこの杖も、一体どこで手に入れるのだろう。

「そういうものは、どこで手に入れられますか?」

 口調こそ丁寧だが、貪欲さが顔ににじみ出ていた。トムらしくて思わずクスクス笑いが漏れる。

「すべて時が来れば――何か、きみの洋箪笥から出たがっているようだが」

 かすかにカタカタという音が箪笥から聞こえてくる。扉を開けなさいとダンブルドアに命じられ、トムの顔に微かに怯えが写っているから、トムが動くより先に私は箪笥の前へ行き扉を開けた。

 小さなダンボールの箱があり、中で何かが暴れている。まるでネズミ捕りにかかったネズミのようだ。この中は「献上品」が入っているはずだ。ダンボールをベッドにおいて蓋を開ける。

 ヨーヨー、銀の指ぬき、色の褪せたハーモニカなどなどなど。どれも取るぬ足らないがらくたに見えるだろうが、トムにとって特別なものだ。トムが他の子達より上位に立つ証拠の品々だから。

「それぞれの持ち主に謝って、返しなさい」

 ダンブルドアが杖を戻しながら静かにいう。もうがらくたは動かなくなっていた。トムが「はい、先生」と答えるのを遮るように、ここにきて初めて口を開いた。

「なんで、貰ったものを返さないといけないんですか? 教授」

「貰った?」

 聞き返すダンブルドアに頷く。だって、私は彼らがトムにこれらを渡す場面を見た。怯えの感情からくる貢物だったとしても、トムはくれなんて頼んですらいない。貢物を頂いただけで何故盗人呼ばわりされなくてはいけないのだ。

「ええ、だって彼らはこれをトムにあげたの。これからも僕たち/私たちと仲良くしてくだいって。貰った物を返すなんて失礼にあたると思うんですが、違いますか? 教授」

 嫌みたらしく付け足された教授というフレーズにダンブルドアの眉が上がる。反骨精神むき出しの私の様子に、トムにかかりきりだったダンブルドアがはじめて私をじっと見つめた。半月型の眼鏡の奥でキラキラ光る青い瞳は何もかも見通しそうで恐ろしい。

「アビー、僕が半ば取り上げる形だったんだから、良いんだよ。すみません、彼女は仲間思いなだけなんです」

 私の代わりに頭を下げるトムを見つめる。不思議だった、あのプライドの高いトムが誰かに頭を下げるなんて見たことがない。それでも、トムにつられてなんとなくダンブルドアに頭を下げた。

 魔法力に溺れるなとか魔法省が法を破る者を厳しく罰するとか色々忠告めいたものを言い連ねるダンブルドアにもトムは殊勝に頷いた。


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