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▼ 入学の案内2

「あなたは誰ですか?」

「きみに言った通りだよ。私はダンブルドア教授で、ホグワーツという学校に勤めている。私の学校への入学を勧めにきたのだが――きみが来たいのなら、そこが新しい学校になる」

 トムはいよいよ怒り心頭といった様子でベッドから飛び降り、憤激した顔でダンブルドアから遠ざかった。窓まで下がる。アビーも来いと強い口調で言われ、きつい口調に慣れてない私はビクビクしながらトムの横に行った。

「騙されないぞ! 精神病院だろう。そこから来たんだろう? 僕からアビーを遠ざけようっていう魂胆だな! 精神病院になんて入るものか――」

 私をよそにトムとダンブルドアの激しい口論――一方的にトムが熱くなってるだけではあるが――は続いたが、ダンブルドアがホグワーツは魔法学校だといったところで、空気が凍てついた。以前来た老夫婦を思い出す。痛いほどの沈黙が場を包み込み、リドルに至っては無表情に戻っていたが、凍てつき、目だけはせわしなくダンブルドアと私を見ていた。

「あなたも、魔法使いなのか?」

「いかにも。君は自分が魔法使いであるということをすんなり受け入れるというのかね?」

「僕だけじゃない、アビーも特別なんだ。僕らはものを触らずに動かせる、動物を思い通りに操れる、傷を癒せる。僕らを――アビーを困らせるやつには、いやなことを起こるようにだってできる。傷つけることだってできる」

 喜びをかみしめるように、握ったままの私の手を親指で優しく撫でる。トムがここまで本性を隠さず話すのは何故だろう。今更魔法使いだと言われたところで「知ってます」と返すくらいだと思っていた。

 ああ、自慢してるんだ。それか威嚇だ。自分たちだけが特別だと思っていたのが、先日の老夫婦やこのダンブルドア教授のせいで崩れてきていた。特別な仲間がいても、その中でも格別だと彼は自分に言い聞かせたいのだ。

「きみに異存はないだろうと思うが、もし、ホグワーツへの入学を受け入れるつもりなら――」

「もちろんだ!」

「それなら、私を『教授』または『先生』と呼びなさい」

 ほんの一瞬リドルの表情が硬くなった。私の手を握っている手もこわばる。それから、いい子ぶりっ子するように、丁寧な声で言った。

「すみません、先生。あの――教授、どうぞ、僕らに見せていただけませんか? 魔法を」

 ダンブルドアは断るだろうと思った。だが、彼は背広の内ポケットから杖を取り出し、隅の洋箪笥に向けて軽やかに振った。瞬間、箪笥が炎上した。リドルも私も揃って、30センチは飛び上がっただろう。リドルが私の手を払い、ダンブルドアに食ってかかった時にはもう、炎は消え、無傷のまま箪笥はそこにあった。


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