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▼ 家族と家族3

 トムはズカズカと部屋に入ると、強引にバーナードの腕を掴んで私から引き離した。私の腕を掴んでその華奢な背中に匿うように後ろへやられる。

 数歩下がって彼の背中越しに老夫婦を見た。彼らは突然の乱入に驚いているようだったが、いたって落ち着いていて焦りのようなものは見えなかった。

『僕からアビーを引き離そうなんて、容赦しないぞ』

 トムの口からシューシューと音が漏れる。感情が高ぶっているからか、何故か蛇語を話す彼の腕の裾を引っ張った。

「トム、あなた英語話せてないわ」

「……ほんとに?」

「わざとかと思ったわ。わざとじゃないの?」

 能天気に会話を始めたトムと私をよそに、驚きでこれでもかと目を見開いている老夫婦がはじめてトムに興味を持ったようだった。

「トム、私たちは無理にあなたたちを引き離そうなんて思ってないのよ。2人が望むなら、一緒に引き取ることだって出来るわ」

 そう言ってニコニコと微笑むコレットに違和感を覚えた。さっきまで手に負えないと言っていたのはどこのどいつだと怒鳴ってやりたい。トムもそう思うだろうと思っていたのに、間を空けた後「考える」とだけ言い残すと私の手を引っ張った。

「まぁ、待ちなさい」

 バーナードが今度杖を振ると、机の上のティーカップが増え、私たちの体が宙を浮き椅子に座らされた。それを見て満足げに頷いたバーナードが向かいのソファに腰掛ける。コレットもそれに倣って隣へ座った。

「話すことはない」

「私たちは君を誤解していたかもしれない。よくよく考えれば、才能があればあるほど、マグルの中で悪評が広まるものだ」

 バーナードの目を、コレットの目を見る。どこまでも優しそうな老夫婦だったが、それが本当のようには思えなかった。トムが、蛇語を話したからだ。だから、手のひら返しをしたのだ。なんとなく、嫌な感じがしてトムの手を握ると安心させるように強く握り返してくれた。

「アビーに関しても、僕に関しても、才能にしか目がいかないみたいだな。欲しいのは、子供じゃなくて特別な子供だろ」

 一見自惚れにも見える発言で少しばかり隣で聞いていて恥ずかしいが、恥ずかしがるような雰囲気ではない。今は完全にシリアスな場面だ。

「えぇ、そうよ。せっかく引き取るなら、才能がある可愛い子がいいわ」

 あっけらかんと目の前の老婦人は笑った。

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