Fragments of star | ナノ


▼ 転校生5

 ルーピンに教えてもらい、女子の寝室へ続く螺旋階段を上っていく。螺旋階段を上った先、学年ごとに分かれており、ドアに「5」と書かれた扉を開ける。扉の先は談話室と同じく丸い部屋で、赤いベルベットのカーテンが掛かった天蓋付きのベッドが3台置かれている。細長い窓からは校庭が見える。

「オリヴィア、さっきはごめんなさいね」

 リリーが申し訳なさそうに言った。

「別にいいのよ」

「私はマーリンって言うの。本当に、この部屋は美人ばっかりで嫌になるわね」

 ベッドのカーテンからひょっこりと顔を出した、黒髪の少女は鼻を鳴らした。ちょこんと上を向いた鼻にはそばかすが散らばっている。だからといって嫌な感じはしない。私って美人かしらとオリヴィアがわざとらしく頬に手を当てて薄く微笑めば、嫌な女ねとマーリンはケラケラと笑った。男子4人組といい、リリーやマーリンといい、グリフィンドールは非常に友好的で、人見知りする子はいないらしい。

「ところで、何故ジェームズたちに冷たく当たるの? 今の所おふざけは過ぎるけど良い人よ?」

「表面に騙されてるだけよ、オリヴィア」

 オリヴィアが前々から感じていた疑問を口にすれば、リリーは目を釣り上げた少し口調を強めに言った。

「あら、私は良いと思うわ。シリウスなんて凄いハンサムだし」

 マーリンがふざけたように笑う。マーリンの言葉にリリーは怒ったように口をへの字に曲げた。

「彼ら、スリザリンってだけで私の親友をいじめるのよ!」

「仕方ないわ。スネイプは嫌なやつらとつるんでるし、地味で根暗だもの」

 マーリンが飄々とした様子で紡いだ言葉にリリーは嫌な人たちと一緒にいるのは本当だけど……と少し瞼を伏せて呟いた。

「そのスネイプって人がどんな人か知らないけど、リリーから言えば聞いてくれるんじゃない? 嫌なやつらとつるむのはやめてって」

「そうね……言ってみるわ」

 オリヴィアの提案にリリーは力無く頷いた。きっと何度も言ってきたような雰囲気だ。

「こんな暗い話はやめようよ、せっかくオリヴィアと知り合って初日なのに」

 マーリンが見たこともないお菓子――マグルの世界で有名なお菓子らしい――の包装を開けて口に放り込みながら言った。この話題に飽きてしまったらしい。

「確かに、ちょっと初日の話題にはヘビーね」

 リリーが肩をすくめて同意した。そのあとはくだらない話を幾つかしながら――なぜ太った婦人は不名誉な呼び方を怒らないのかしら? ふくよかな人がモテる時代の人なんじゃない?――パジャマに着替えた。

 オリヴィアのパジャマは以前イルヴァーモーニーのローブと似たもので、青とクランベリー色のシャツワンピースのようなものだ。

「そのパジャマかわいいわね、どこで買ったの?」

「前の学校の支給品なの」

「あら! イルヴァーモーニーはパジャマまで用意してくれるの?」

「しかもデザインまで可愛いわ。ローブの写真はないの?」

「あるわよ」

 オリヴィアが前に悪戯仕掛け人たちに見せた写真と同じものを見せれば、さすが女子と言うべきか、リリーとマーリンが注目したのは制服以上に隣に一緒に写っている男子だ。

「オリヴィアのボーイフレンド?」

「親友よ、エディっていうの」

「怪しいわね……吐きなさい!」

 ふざけたようにリリーがオリヴィアのベッドに飛び乗り、オリヴィアを羽交い締めにする。羽交い締めにするだけならまだマシだった。そのまま脇を擽られたのだからたまったもんじゃない。

「ふっ…ふふっ……ははははっやめ、やめてよ!」

「オリヴィア、あなた普段からこれくらい大笑いした方がモテるかもよ」

 一旦リリーが擽り攻撃を止める。鼻息荒く、胸を上下に呼吸するオリヴィアを上から覗き込んだマーリンが言った。オリヴィアはそれにニヤリと態とらしいくらい自信満々の笑みを浮かべた。

「これ以上モテてどうしろっていうのよ」

「あなた、世の女子を敵に回したわね! リリー、協力して!」

 マーリンが枕を片手にベッドに乗り上げてくる。それで思い切りぶたれたのだから、オリヴィアは目を白黒させた。リリーも笑って自分のベッドから枕を取ってくる。その動きを見てようやくオリヴィアは我に返って枕をつかんだ。枕投げは夜中まで続き、翌日全員寝坊したのは言うまでもない。


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