Fragments of star | ナノ


▼ 転校生4

「さあ、諸君、就寝時間、かけ足!」
 
 ダンブルドアの掛け声で生徒たちは一斉に立ち上がった。押し合いへし合いと寮の方へ一斉に戻ろうとしていたが、何故だかオリヴィアたち5人の周りだけは空いていた。

「貴方たちって、嫌われてるわけ?」

 慣れた様子の4人に思わず同情めいた眼差しを向けたオリヴィアに、ジェームズは大げさに肩をすくめた。シリウスは自慢げに髪をかきあげている。ルーピンやピーターは何とも形容しがたい微妙な表情だ。

 5人の隣をリリーがため息をつきながら通り過ぎる。自惚れ屋も大概にしときなさいよと毒づいた。目を丸くするオリヴィアにリリーは少し苦笑して、きっと同室だから部屋で待ってるわとだけ言うとひらひらと手を振って立ち去った。

「エバンズは少し手厳しいんだ、僕らにね」

「スニベルスのお友達だからな」

 ムーニーの次はスニベルス。どうせ教えてくれないだろう内輪ネタにオリヴィアは呆れ半分不満半分でため息をついた。

「じゃあ、私はリリーと同じ部屋だろうから彼女と行くわ。また明日ね」

「おい、そんな冷たいこと言わないでくれよ」

 少し苛ついた様子のオリヴィアに慌ててシリウスは近づくと肩を抱き、先に進むのを阻んだ。わざとらしく舌打ちしたオリヴィアを宥めるようにシリウスが頭にキスを落とす。

「ちょっと! それが会って間もない女性にすること?」

「もう知り合って長いだろ」

「貴方って多分誰とでも親友になれるわ……で? 私たちは何で避けられてるわけ?」

 ぐるりと目を回したオリヴィアは、シリウスの腕をはたき落としてから歩く。オリヴィアの嫌味も諸共せずシリウスは楽しそうに笑った。ジェームズは二人を抜き去り、前を歩くリリーの方へと近寄っていった。

「俺たちはこの学校ではちょっとした有名人なのさ」

「どういった意味でかしらね、優等生としてとは思えないけど」

「理由は、これさ」

 そう言うとシリウスは得意げに笑ってローブからクソ爆弾をちらりと見せた。悪戯っ子って訳ねとオリヴィアが納得したように言えば、シリウスは不満そうにそんな可愛らし言い方はやめてくれといった。

 動く階段をいくつも上っていく。寮の近くに辿り着く頃にはオリヴィアは軽く息切れを起こしていた。ジェームズが振り向いて、呆れたようにこちらを見て笑う。

「1週間もすれば体力も人並みになるはずさ」

「8階まで登るのに息切れしないのが人並みだって仰るの?」

 ジェームズの馬鹿にしているのか励ましなのかわからない言葉に苛々したように言葉を返した。隣でシリウスがそんだけ言えるならまだまだ元気だなと肩を竦め、ピンクのドレスを着た女性の絵画を指差した。

「太った婦人さ、合言葉を言えば寮に通してもらえる。リーマス、合言葉は何だったかい?」

「骨なし骸骨だよ」

 リーマスが合言葉ーー奇妙な合言葉だが一体どうやって決めているのだろう!ーーを言うと、婦人はオリヴィアを見て、随分大人びた新入生ねと笑いながら扉をあけてくれた。

 肖像画があった壁の部分にある穴をくぐり抜けた先は広い談話室だった。心地よい円形の部屋で、正面には暖炉がある。暖炉の上には掲示板があり、色々な紙が貼り付けられていた。落ち着いた紅で纏められた色調は酷く心を暖かくさせる。

 居心地の良さそうなふかふかのソファや古ぼけたローテーブルが沢山あり、暖炉の前にある肘掛け椅子はきっと冬場は人気になるであろう事が簡単に想像できた。

「どう? 気に入った?」

 ジェームズが得意げに聞いてくる。オリヴィアは「とっても気に入ったわ」と今日で1番柔らかな笑みを乗せて微笑んだ。

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