▼ 秘密の部屋4
「起こしちゃった? ごめんね、ガニメド 。怒らないで?」
不機嫌そうに嘴をカチカチと鳴らすガニメド をゆっくり撫でる。目を閉じ満足げにしている、ふくろうフーズをあげれば許してくれたらしく渋々前足を出してくれた。手紙を持たせ、そのままガニメド を腕に乗せ外に出る。慌てていてグローブも忘れたから、ガウン越しでも爪が食い込んで大分痛い。痛みを我慢し、ガニメド を外へと送り出す。
ふくろう小屋の外に出てぶらぶらと城へ戻る道筋をたどっていると、赤いローブの人たちが前を通る。思わず、駆け寄って目当ての人物の腕を掴んだ。
「フレッド!」
「おいおい、間違えるなんて酷いな……どうした? 真っ青だぞ」
呆れたようなジョージが屈んで ソフィアを心配そうに見る。フレッドも、キャプテンらしき人に一声かけてからソフィアの方へ寄ってくる。ハリーが心配そうに此方を見ていたが、フレッドとジョージを残して選手たちはクィディッチ競技場へ向かった。
「ごめん、練習の邪魔しちゃったわ。もうすぐ試合なのに……」
「問題ないよ、1回くらい練習休んだところで僕らが足手纏いになるような選手じゃないんだ」
「実力派なのさ」
気にするなと首を振るフレッドに頷きながら、ジョージが茶化すように言った。何があったんだと聞かれて、ソフィアは思わず口を噤む。予知夢のことは両親にだって言ったことはない――正確には、たった今手紙で伝えたところだ。
「違うのよ。ただ、怖い夢を見て……別に、大丈夫よ」
ソフィアが無理やり笑みを貼り付けて言えば、フレッドが怖い夢を見ただけでそんな青ざめたことないだろと眉を上げて問いかけてくる。それに笑って首を振った。
「秘密の部屋の継承者の敵って、マグル生まれのことでしょ。自分も石になる夢を見て」
小さな声で嘘を呟けば、ジョージが「マルフォイの言葉を借りればそうなるな」と嫌そうに言い、ソフィアの肩を叩く。彼なりに励まそうとしてくれているらしい。
「ソフィア は、アスター家の一人娘だ。狙われるわけない」
フレッドが励ますように肩を叩く。それにソフィアは頷いてみせた。そういえばと態とらしくない位に話題を変えてジニーの話を切り出せば、元気がないんだよと心配げに彼らは言うので、今度一緒に励ますために作戦を練ろうと声をかけた。今、ソフィアに出来る事は何があるか分からない。ただ、あの時のクィディッチのように、クィレルのように、ミセス・ノリスのように、何もできず見るだけは終わりだ。
まだあの夢が予知夢なのか分からない、いつもの監視カメラのように視点が固定されたわけでもすぐ忘れてしまうわけでもない、鮮明に覚えてるこの記憶。少しでも予知夢の可能性があるのなら、 ソフィアはその未来を見たくないと強く思った。せっかく忘れなかったのだから、頑張りたい――。
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