immature love | ナノ


▼ 目覚め5

 ソフィアはこれほどまでに楽しい宴会に参加したことがなかった。学校中の生徒が大広間に集まり(それも、皆パジャマ姿で!)、お祝いは夜通し続いた。

 最高だったのは、期末試験がキャンセルされたことと、ロックハートが学校を去ると決まったことだ。ロックハートの件では、大半の生徒が歓声をあげた。加えて、かなり多くの先生も生徒と一緒になって喜んでいた。

 トライフル・カスタードをつまんでいると、フレッドが側までやってくる。さっき会ったばかりだったので、 ソフィアは何だか気恥ずかしくなりフレッドの顔をまともに見ることができなかった。

「付き合うって、どんな態度取ればいいのかしら?」

 恐る恐るフレッドを見上げれば、フレッドも困ったように頭を掻く。今まで、それこそ記憶もない幼少期からフレッドとはずっと一緒だった。今更、どんな態度を取ればいいのか ソフィアには分からない。フレッドは ソフィアの手を取ると、微笑んだ。

「さっきはフライングしたけど……急いで変える必要なんかないだろ? 時間は余るほどあるんだ。ゆっくり進もうぜ」

 昼飯を一緒に食べるとこからスタートしようぜと笑うフレッドに、ソフィアもつられて笑った。関係性を表す名前は変わったが、フレッドはフレッドのままだった。

「そうだ」

 ソフィアが思いついたような声をあげると、フレッドはどうかしたかと首を傾げた。それを見て、ソフィアが笑みをますます深める。

「寝てた間の授業の遅れを取り戻したいの。付き合ってくれる?」

「初デートの誘いにしちゃイマイチだな」

 フレッドが態とらしい位に恭しく礼をした。「お姫様の仰せの通りに」なんて笑いながら言っている。ソフィアは「よろしい」なんて威張った風に言って、くすくす笑った。こんなに幸せになれるなら石になるのもありだなんて不謹慎なことを考えた。

「あとね、あなたの冒険の話も聞かせて」

 ソフィアの言葉に、フレッドは待ってましたと言わんばかりに目をキラキラと輝かせて頷いた。

 あまりにも時間が早く過ぎ、残りの学期の授業なんてあっという間だった。ソフィアは気がつけば、トランクとガニメドとレクシーが入ったカゴ二つをカートに乗せホームにいた。

 コンパートメントでは、レティ、マルタ、ギリアン、セドリックと五人で乗っていたが、もうすぐ着くというところでフレッドがソフィアたちのいるコンパートメントまで来た。

 ソフィアはウィーズリー家と一緒にオッタリー・セント・キャッチボールへ帰ることになっていた。漏れ鍋へ行き、暖炉から煙突飛行ネットワークで隠れ穴へ行く手筈だ――夕食をうちに食べようとフレッドが誘ってくれた。

 セドリックたちにまた夏休み遊ぼうと ソフィアは別れの挨拶を告げ、トランクを持つのをフレッドに手伝ってもらい通路へ出た。フレッドと付き合い始めたことは報告済みだったので、迎えに来たフレッドに皆呆れた視線を送っていた。

「パーシーが夏休み中部屋にこもりきってたの、何でかやっと分かったんだよ」

「今更その話?」

 首を傾げたソフィアにフレッドはまあ聞いてくれよと続けた。耳元に顔を寄せられ、小声で話される。その内容は衝撃的だった。

「パースに彼女ができるなんて!」ソフィアは驚きで叫んだ。

「今日の夕食が楽しみだよな」

 フレッドがにんまり笑うので、ソフィアもつられて笑った。どうやってからかってやろうか企んでいる顔だ。「嫌がるんじゃない?」と聞けば、「だからこそだよ」とフレッドが答える。

 ウィーズリー一家が待っている。自分の弱みが握られたとも知らないパーシーもいることだろう。列車が停車の合図を鳴らした。ゆっくりと減速して行った。

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