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▼ 禁じられた森2

「ハグリッドが捕まるとき、秘密の部屋について何か知りたかったらクモの跡を追っかけろって言ったんだ」ハリーはすんなり白状した。「今日、やっとクモが禁じられた森の方に向かってるのを見つけたんだよ」

「そりゃあいい」ジョージが言った。「この暗闇の中、広い森で、小さいクモを追いかけるだけでいいのか」

「ああ、ウン」

 ロンが嬉しくなさそうに頷いて、地面を指差した。クモはどう見ても小さくはなかった。大きなクモが数匹ガサゴソ這っている。クモの群れがザワザワと小道を移動している。

 ハリー達が止める間も無く追いかけて森の中に入って行ったので、フレッドはジョージと顔を見合わせ、杖先に灯りを灯し、二人についていくことにした。

 やがて、木々が一層深々と茂り、空の星さえ見えなくなり、闇の帳りに光を放つのは三本の杖だけになったその時、クモの群れが小道からそれるのが見えた。その間、全員黙って歩き続けた。こんなに森の奥深くまで来るのは、フレッドでさえ初めてだった。

「どうする?」ハリーが聞いた。

「ここまで来てしまったんだもの」ロンが答えた。

「ほら、行ってみようぜ」フレッドの声には若干冒険への興奮が滲んでいた。

 森の茂みの中に入り込んだ。行く手を遮る木の根や切り株も、ほとんど見えない真っ暗闇だ。フレッドとジョージは「ルーモス マキシマム」と唱えたが、それでもお互いの位置がなんとなく分かる程度だった。

 何度も立ち止まって、明かりを照らしてクモの群れを確認し、方向を正さなければならなかった。突然、ファングが吠えはじめた。

「なんだ?」ロンは大声をあげ、真っ暗闇を見回し、フレッドに抱きついた。フレッドはロンを引き剥がしながら、用心深く杖を構えた。

「向こうで何かが動いている」ジョージが言った。

「シーッ……何か大きいものだ」ハリーが声を潜めて言った。

 何か大きなものが、木立の間を枝をバキバキ折りながらものすごい勢いで近付いてきた。

「プロテゴ!」フレッドとジョージは咄嗟に杖を振った。

「もうだめだ」ロンが思わず声を漏らした。「もうだめ、もうだめ、ダメ――」

 突然右のほうに閃光が走った。何かの呪文だろうかとフレッドはもう一度プロテゴを唱えようとしたが、暗闇の中、浮かび上がったシルエットに見覚えがあり手を止めた。

「おい、俺たちの車じゃないか?」ジョージが言った。

「行こう!」ロンが突然元気を取り戻した。

 開けた場所に、フォードアングリアがいた。暗闇の中で、ヘッドライトをギラつかせている。ロンが口をあんぐり開けて近づくと、車はゆっくりと、まるで大きなトルコ石色の犬が、飼い主に挨拶するようにすり寄ってきた。

「ご覧よ。森の中で野生化しちゃってる……」

 ロンが言った。確かに、車の泥よけは傷だらけで泥んこだった。勝手に森の中を動き回っていたのだろうか。フレッドとジョージは驚きで口をあんぐり開けた。

「パパったら、一体どんな魔法をかけたんだ?」

 フレッドが言いながら、ジョージを振り返ったが、そこにジョージはいなかった。何か大きな動物が、ジョージの体を鷲づかみにして持ち上げた。いや、動物じゃない。クモだ。

「ステューピファイ!」

 フレッドが反射的に放った呪文は、ジョージの耳を掠めてクモに当たった。

「ありがとうよ」ジョージがじとりとフレッドを見ながら言った。「危うく、餌にされるところだった」

 フレッドは肩をすくめた。表情には出さなかったが、失神呪文がジョージに当たらなくてよかったと、心の底から安堵した。

「おい、大丈夫――」ジョージは続けた。「じゃないみたいだな」

 フレッドとジョージと、野生化したフォード・アングリアしか残っていなかった。遠くから、ロンとハリー、ファングの悲鳴や鳴き声が聞こえてきた。声はだいぶ小さく、既に距離が空いてしまっていることがわかった。

「弟が餌にされちまう」フレッドが頭を抱えながら言った。「早く追いかけないと」

 クラクションが鳴った。フレッドとジョージが振り返ると、車のドアがパッと開いた。

「乗ろうぜ!」

 フレッドは考えなしに、かつてのウィーズリー家の愛車に飛び乗った。ジョージもすぐさま助手席に滑り込む。

「でも、あいつらどこに連れてかれたんだ」

 声はもうフレッドとジョージのいる場所まで届かなかった。策を練っていると、車が勝手に前へと進み、徐々にスピードを上げた。

「パパのマグル製品イジりがここまで高度だったなんてな」

 ジョージが呆れてように呟いた。自動運転で目的地まで進んでいる車に乗って、フレッドとジョージは暗闇の中を猛スピードで進んだ。

 車は、既に野生化して時間が経つからか、車体に傷が付くことも恐れずに、枝をバキバキと折って茂みの中を猛然と進んでいく。

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