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▼ 再戦4

 ソフィアとハーマイオニーがいる廊下から遠く、城の外、晴れ渡る空が広がるクィディッチ競技場にはホグワーツ中の生徒が押し寄せていた。更衣室にまで生徒たちの騒めきが聞こえてくる。

 グリフィンドールの選手は揃っていて、紅色のユニフォームに着替え、座ってお決まりのウッドの演説を聞いていた。ウッドは異常としか思えない熱量で、目がギラつかせながら力を込めて演説している。フレッドは殆ど右から左へ聞き流していて、内容がまったく頭に入らなかった。

「どうしたよ、相棒」ジョージがフレッドの肩に腕をかけた。

「ソフィアが一人で城に歩いてくのを見てさ……」フレッドが付け足した。「会場で見かけたか?」

「見てない」ジョージが言った。

「だよな。少し心配なんだよ。ほら、ソフィアって……」

 フレッドは箒を担ぎ、グラウンドに向けて歩き出した。ジョージも続く。

「大丈夫だろ」ジョージは肩をすくめた。「継承者が真実薬を飲ませて回ってるわけでもないんだし」

 グリフィンドール選手がグラウンドに入場すると、ワーッという歓声と拍手が起こった。ハッフルパフ選手も同じタイミングで入場し、その中にはセドリック・ディゴリーの姿もあった。

「心配なら聞いてみろよ」ジョージが声を潜めて言った。「ソフィアのホグズミードデートの相手に」

「やめろよ」

 フレッドが、だいぶ強い力で肘でジョージの身体にぶつけた。ジョージが仕返しに出る前に、フレッドは箒に跨り、地面を強く蹴った。ふわりと浮いて、瞬く間に会場を見下ろせる位置まで上昇する。観客席にいる生徒は豆粒のように小さく、見慣れたブロンドヘアを見つけることはできなかった。

 オリバー・ウッドはゴールの周りをひとっ飛びしてウォームアップし、マダム・フーチは、競技用ボールを取り出した。位置につこうと箒の柄の向きを変えた時、マクゴナガル先生がピッチの向こうから行進歩調で腕を大きく振りながら、半ば走るようにやってくる姿が見えた。

「この試合は中止です」

 マクゴナガル先生は満員のスタジアムに向かってメガフォンでアナウンスした。野次や怒号が乱れ飛んだ。フレッドの心臓は今やドラムのように音を立てている。

「全生徒はそれぞれの寮の談話室に戻りなさい。そこで寮監から詳しい話があります。みなさん、できるだけ急いで!」

 マクゴナガルは、非難の声をものともせず、メガホンで叫んだ。マクゴナガル先生は、メガフォンを下ろすと、ハリーに合図した。

「ポッター、私と一緒にいらっしゃい……」

 ハリーは困惑した様子でマクゴナガルについて城へ向かって行った。ハッフルパフの選手が集まっているところに、スプラウトが歩いていくと、暫くしてセドリックを連れて抜け出し、同じく城へと向かって行った。

「ハリーとセドリックだけ、なんで連れてかれたんだ?」ジョージが聞いた。

「謎だよな」フレッドが首を傾げた。「二人に共通点なんてあるか?」

「二人ともシーカーよ」

 アンジェリーナ・ジョンソンが双子の会話に加わった。

「なんで試合を中止にしてシーカーを呼び出すんだ?」

 ジョージがお手上げだと言わんばかりに、両手を上げて肩をすくめた。

「なあ」フレッドはジョージに囁いた。「今こそ、あいつらがどこに行ったのか見るべきじゃないか?」

「そりゃ名案だ」ジョージがちらりとオリバーを見て言った。「嘆き苦しむオリバーの近くにいるのはごめんだぜ」

 フレッドとジョージは一足先に更衣室を出て、寝室から古びた羊皮紙を持ち出した。談話室を出て、階段を降りる。五階の廊下に出てから、タペストリーの裏、隙間にあるごつごつとした出っ張りを押した。隙間は見る見る間に大きくなり、人一人通れるくらいになる。フレッドとジョージ(と、たまにソフィア)で悪巧みしたり、悪戯グッズの開発をするときに利用する部屋だ。

 ジョージは部屋に着くと先ほどポケットに突っ込んだ羊皮紙を取り出した。杖を取り出し、羊皮紙に軽く触れて、こう言った。

「われ、ここに誓う。われ、よからぬことを企む者なり」

 ジョージの杖の先が触れたところから、細いインクの線が出た。線は交錯し、あちこちで繋がり、細かな地図が浮かび上がる。そして、紙の一番てっぺんに、渦巻形の大きな緑色の文字が現れた。

 
 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ
 われら「魔法いたずら仕掛人のご用達商人がお届けする自慢の品
 忍びの地図


 忍びの地図には、ホグワーツの敷地内全てが記されている。この地図の素晴らしい点は、なにも細かく丁寧に抜け道まで描かれていることだけじゃない。地図上を、一つ一つ名前が描かれた小さな点が動いている。

 フレッドとジョージが一年生の頃、フィルチの事務所にある没収品が詰め込まれた引き出しから頂戴したものだ。これは、ソフィアにも、悪友リー・ジョーダンにも教えていない双子のとっておきの品だった。

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