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▼ マッキノン家の秘密5

 あのまま眠り込んでしまったらしい。 ソフィアが起きた時、ベッドの足元にはプレゼントの山があった。そうだ、今はクリスマス休暇だったとソフィアは驚いた。一旦、秘密の部屋も予知夢のことも脇に置いて、ソフィアはプレゼントの開封作業をすることにした。なにせ、ソフィアが一年間で一番楽しみにしている作業だった。

 レティからはレクシーを刺繍したハンカチが届いている。マルタからはスペインで大人気だという日本の漫画が全巻届けられていたが、ソフィアはそれがスペイン語で書かれていたため読むことはできず、すぐに本棚の一番奥にしまった。ギリアンからはフィフィフィズビーが届いていた。

 フレッドからは小さな丸い手鏡と赤い石のピアス、ジョージからは糞爆弾、ウィーズリーおばさんからは赤色の手編みのセーターが届いた。セーターには、黄色の毛糸でイニシャルが編み込まれている。

 楽しみにしていてと豪語していた肝心のセドリックからは、何やらフラスコのようなものが贈られてきた。わくわくする気持ちのまま包装紙を破れば、フラスコの中で赤い薔薇が咲き誇っている。不思議なことに、光を反射してキラキラと輝いていた。

 ソフィアは一目でフラスコを気に入り、サイドテーブルの上に飾った。クリスマスカードには、ソフィアが気に入ったと言ったからかオルゴールが鳴る仕様になっていた。

 早速フレッドがくれた赤いピアスをつける。つけた瞬間、ピアスが光り鏡の反射に目を瞑った。光が収まり、目を開くとピアスはピンク色の耳あてに変わっていた。

 紙がひらひらと目の前を落ちるので捕まえて見てみれば、「室内ではピアス、屋外では耳当ての優れもの」と書かれていた。「ここ室内なんだけど」という ソフィアの呟きは誰にも聞かれることがなかった。

 両親からは可愛い白い色のスノーブーツだったので、モチモチとしているようなデザインは可愛らしい。室内は暖かかったが、ソフィアは早速履き替えた。パジャマ姿に、耳あてにスノーブーツまで履いてソフィアの格好はちぐはぐだった。

 アスター家の親戚は、今年のプレゼントのテーマは「マグル」にしたらしい。叔父や叔母、祖母や曽祖母まで、マグルの映画のビデオや映画を再生するレコーダーやテレビも一緒にプレゼントされた。(テレビやレコーダーは、ハリーの部屋で見たマグルの製品とそっくりだった。)本、ミニチュアの車の模型まで届いた。そのほかに、「マグルの映画とは――実は写真は動いていない」という明らかにアスター家の親戚の誰かが贈ってくれたまぐるシリーズの一つがあったが、差出人はクリスマスカードをつけ忘れていたので誰か分からなかった。

 部屋に溢れかえったマグル製品に、ソフィアはクィレルと去年マグルの話を沢山したことを思い出し、寂しい気持ちになった。「マグルの映画とは――実は写真は動いていない」を早速開くと、沢山の写真を連続で映し出して動くように錯覚させていると映画について説明が書かれていた。

 去年のバレンタインに、クィレルに説明されたばかりの内容だ。あの時から、一年間も経っていない。ソフィアは、クィレルがなぜ黙っているようにと言ったのか漸く理解できた。クィレルが例のあの人の手下で、あのターバンの下には例のあの人が眠っていたらしい。

 ――声のボリュームを下げて。起きてしまう。

 あの時、予知夢の話をしたソフィアを遮ったクィレルの台詞は、眠っていたレクシーではなく彼の頭に潜む例のあの人を指していたのではないだろうかとソフィアは思った。だから、ソフィアの能力を信じ、出生を誰にも言ってはいけないと強く言い聞かせたのだ。

 もしかすると、例のあの人に報告しているかもしれないが、ソフィアは、それはないだろうと確信していた。クィレルもまた、ソフィアを守ってくれたのだと思った。でなければ、ソフィアを攫うか殺していた筈だ。

 闇の帝王に声を掛けられるほど優秀な予言者であった父にも、未来を大きく変えることはできずに亡くなった。ソフィアは、自分を守ってくれたクィレルの死を視ておきながら、救うことができなかった。

 自分に、未来を変えることなどできるのだろうか。ソフィアの中で、自信も決意もぐらぐらと揺らいでくようだった。

 ソフィアは、ジニーが青白い顔で横たわっていた姿を思い出した。瞼を閉じても、手で目を覆っても、その姿が目から離れない。乱暴に裾で涙を拭った。 ソフィアの目から涙はもう流れていない。ただ、決意を瞳ににじませた。

「よし!」

 ソフィアは自分を奮い立たせるように頬を叩いた。

 遠くからクレアの声が聞こえ、 ソフィアは「はーい」と間延びした返事をした。慌ててパジャマにガウンを羽織り、耳当てを外す。スノーブーツを脱いで、スリッパを探した。スリッパが片足見つからず、ベッドの下を覗くというハプニングがあったが、ソフィアは楽しげに足を弾ませて階下へ向かった。


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