immature love | ナノ


▼ マッキノン家の秘密4

 ドウェインが少しほほ笑んだ。懐かしんでいるような顔をしていた。

「ある時、アルが私に教えてくれたんだ。お前はクレアと結婚する未来だから安心しろって……そして、彼の予知の能力を打ち明けてくれた」ドウェインがほほ笑んだ。「あの日は、親友から信頼の証と幸せな未来の話をされた、とても幸福な瞬間だった」

「パパがさっき言ってた、マッキノン一族の予言って?」ソフィアは聞いた。

「どう話せば良いか分からないな」ドウェインはうなだれて、続けた。「アルが例のあの人の誘いを断ってすぐ、予知夢を見た。死喰い人に襲撃され、一家全員が殺される夢を見たんだ……ソフィア、当時赤ん坊だった君も」

 ソフィアは衝撃で息をのんだ。自分の死ぬ未来がありえたのだから、当然だった。

「ダンブルドアの提案で、アル達は隠れることになった。いくつもの家を転々として、完全に敵を撒いてから隠れ家に入って落ち着く予定だった。最後の移動の日、警備が手薄になった瞬間を襲撃された……唯一、ソフィアだけは救うことができた」

 ドウェインがおもむろに頭の後ろに手をやると、パラリと顔の四分の一を覆っていた眼帯が彼の膝上に落ちた。ドウェインが、顔を上げる。ドウェインの眼帯を外した姿を見るのは、これが初めてだった。ドウェインの隠されていた顔は、醜い火傷で覆われていた。火傷痕は赤黒く、表面はまるでそこだけが干上がったようだ。縫い目が瞼の上を走っている。何かの呪いの痕であることは、明らかだった。

「この傷はその時の戦いで負ったものだ。言い訳をしたい訳じゃないが、これだけは分かってほしい。私は、君たち一家を本気で救いたかった。悲劇的な未来を変えたいと切に願って行動していたんだよ」

 ドウェインの温かな手が ソフィアの頬を包む。

「二人を守れなかった分、二人がソフィアの成長を見届けられなかった分――私は守りたいんだ」

「ソフィア、君はアルとマーリンに本当にそっくりだ……優しくて、誠実で、素晴らしい子だ」ドウェインは少し笑った。「規則を何とも思っていない節があるところも、残念ながら似ているけどね」

「ソフィア・マッキノンとして過ごせず、息苦しい思いをさせてしまって申し訳ないと思ってる。でも、君の安全がなにより大切なんだよ。ソフィアがマッキノンの血を引いていて、さらには予言者の素質があると世間に知られれば、命が危険に晒される恐れもある。そんなことがあってはならないんだ」

 ソフィアは目頭が熱くなった。本当だったら、自分は死んでいた。これまでの十四年間は、ソフィアの両親四人が尽力した結果与えられたものだったのだから、ソフィアは生き残ったことを感謝しなくてはいけない。喜ばなくてはいけない。それなのに、何故か酷く悲しい。涙がじわりと膜を張り、目尻からあふれ出た。自分だけが生き残ってしまったのが、救ってもらったことが、嬉しくとても寂しかった。

 クレアが優しくソフィアを抱きしめた。クレアにしがみつく。

 ソフィアは申し訳なさでいっぱいだった。アスター家の実の子供として生まれていれば、そもそも両親が殺されなければと、これまで何度も夢想した。それに加えて、両親の存在をひた隠しにしなくてはいけない理由は、両親がマグル生まれだからという理由だけだと思って、軽んじていた。

 自分の親が、闇の帝王に殺されたと知っていた。どんな風に殺されたかは知らなかった。死の呪いは、一瞬で人を死の眠りに追いやると聞いていたので、両親が苦しまずに死んだと思っていた。だが、ドウェインの火傷は、決してそんな生易しいものではなかったと物語っているようだった。

「ありがどう」ソフィアは泣きじゃくりながら必死に言った。

 沢山のものを犠牲にして守ってくれた。生かしてくれた。ソフィアは、クレアとドウェインにしがみついた。


prev / next

[ back to top ]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -