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▼ マッキノン家の秘密3

 玄関で、クレアはソフィアのトランクに魔法をかけて浮かせると、二階へと運んでいく。ドウェインは、三人のコートをそれぞれコート掛けにかけると、紅茶を淹れに台所へと向かって行った。

 ソフィアは、レクシーを抱っこして暖炉の前に連れて行った。レクシーは寒さにとても弱かったので、暖炉の前に連れて行くと嬉しそうに寛いだ様子だった。

「ソフィア。紅茶をリビングに運んでおいてくれるかい。積もる話もあるだろう?」

 台所から、ドウェインが笑顔で ソフィアに声をかけた。それに、頷いてティーカップと砂糖とミルクの容器を同じくお盆に載せた。レティの家やホグワーツでは、全ての家事や雑務をしもべ妖精がやってくれていたが、こういう風に家族と一緒に何かをするのが ソフィアは大好きだった。

 ソファには二階から戻ってきたクレアが既に腰掛けており、編み物の続きをやっている。クレアの隣ではアイロンがひとりでにドウェインのワイシャツをアイロンがけしていた。

 クレアが隣をポンポンと叩いたので、その隣に座る。ドウェインが杖を振ると、お盆からひとりでにソーサーやカップが机の上に滑り降り、それぞれの前に並んだ。紅茶を一口飲み、喉を潤す。夢のことを打ち明ける時が来た。ソフィアは勇気を振り絞って、口を開いた。

「前に……」ソフィアは一瞬黙り込んだ。「――クィレル先生に、血の繋がった両親がいるって打ち明けた話をしたでしょう?」

「ええ、そうね」

 クレアは、ソフィアから秘密の部屋について聞かれると思っていたのだろう。不思議そうな顔をしていた。

「実はその時、予知夢の能力があるかもしれないと話したの」

「なんだって!」ドウェインが叫んだ。「そのことを、他の誰かには言った?」

 ドウェインの、唯一露わになっている隻眼は、動揺で見開かれている。ドウェインがここまで狼狽えた様子は、ソフィアは見たことがなかった。ソフィアに予知夢の能力があるという話は、完全に信じている様子だった。ソフィアは、以前立てた仮説が当たっていると思い、ドクドクと脈拍が早くなったのを感じた。

「誰にも言ってないわ。クィレル先生だけよ」

「良かった……絶対に言っては駄目。良い? 絶対に、よ。」クレアが厳しく言った。「あなたの身の安全を守るためなの」

 ソフィアは頷いた。ソフィアは恐る恐る聞いた。

「ねえ、私が予知夢を見るって話を、信じてくれるの?」

 ソフィアの質問に、ドウェインが黙り込んだ。クレアが、励ますようにドウェインの背中をさすった。

「ああ、信じるとも。勿論だ」ドウェインが深い息を吐いた。「なにせ、君の父、アルバータ・マッキノンも……未来を透視する力を持っていた。非常に優れた予言者だった」

 事実として言われると、予想していたこととはいえ、衝撃的だった。ソフィアが呆けたように固まっていると、ドウェインが続けた。

「例のあの人が、アルの……アルバータの予言者としての能力に目を付けたんだ。彼は例のあの人の誘いを断り、そして――殺された」

 ドウェインは、酸素が薄くなってしまったかのように、息苦しそうにしながら言った。ソフィアには、昔話を聞いているようにぼんやりと遠い出来事のように思えた。

「アルは、彼を含めたマッキノン家一族全員が殺される未来を視たんだ」ドウェインはつづけた。「変えられなかった未来であり、変えた未来だ」

 ドウェインの眉間にシワが刻まれた。辛そうに歯を食いしばり、声は若干震えている。いつも凛としている父が、こんなにも辛そうにしている。その姿に ソフィアは驚いて視線を外すことができなかった。

「私から話す?」クレアが気遣うようにドウェインに言ったが、その声も震えていた。

「昔も話したけど、アルとドウェインと私はね、同級生だったのよ。マーリンは私たちの二学年下だったの」


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