immature love | ナノ


▼ 決闘クラブ5

「大丈夫だよ」セドリックが言った。

「有難う」とソフィアは礼を言った。

 スネイプがハリーの前に出た時に、ロックハートが前に転がり出て、蛇に向かって杖を振り回した。バーンという音と共に蛇は二、三メートル宙を飛び、あろうことか此方へ飛んできた。落ちた蛇は怒り狂って、シューシューと威嚇音を出す。 ソフィアは思わず悲鳴をあげて、近くにいたセドリックとレティにしがみついた。

 蛇はソフィアではなく、近くのニ年生に向けて攻撃の構えをとった。蛇の正面にいるジャスティンなんて、今にも攻撃されそうだった。

 その時、ハリーが前に出た。ハリーの口から、シューシューという不気味な音がした。パーセルタングだ! 不思議なことに、蛇はハリーを従順に見上げた。まるで、ハリーが蛇を唆しているように見えた。ハリーがにっこりと、満足げな表情を浮かべている。

「いったい、何を悪ふざけしてるんだ?」

 ジャスティンがハリーに怒鳴りつけた。ジャスティンは怒るというよりも、怯えてるように見えた。ジャスティンはくるりと背を向け、大広間から出て行った。

 ソフィアにハリーが継承者ではないかと聞いてきたことや、最近は一人で行動できないほど怯えきっていたことを思い出した。余計に恐怖が増したのかもしれない。アーニーたちが、ジャスティンのあとを慌てて追いかけて行ったので、ソフィアはひとまず安堵した。

 スネイプが前に出て、蛇は消された。ロンが、ハリーをホールの外へと連れ出していくのを、ソフィアは呆然と眺めた。

「ハリーがパーセルマウスだったなんて」ソフィアが呟いた。

「なんていうか、タイミングが悪いわね」レティが眉を下げた。

「ジャスティンが心配だな。最近相当参ってたのに……」

 セドリックが心配そうに言った。ギリアンも頷く。ハリーがパーセルマウスだと、大広間にいる全生徒に見られた。彼が継承者だという噂は、瞬く間に広がっていくだろう。

 ソフィアは寝室に戻って、横になった。セドリックとの決闘や、ジャスティンとハリーの一連の騒動でとても疲れていた。レティがマルタに今日の騒動を話している。ソフィアは二人が何を言っているのか、聞き取れなかった。意識が沈んでいく。

 目先には蛇が絡み合う彫刻が施された石の柱が上へ上へと聳えている。天井は暗闇に溶け込み、冷たい石の壁に囲まれた、酷く陰鬱な部屋だ。柱の蛇の目が虚ろで薄気味悪い。まるで侵入者を見張っているようだ。ソフィアは蛇に見られているような気がした。

 ソフィアはこの部屋に初めて来るはずなのに、妙な既視感があった。不思議な思いで辺りを見渡す。柱が続く道の先に、高く高く聳える石像があった。壁を背にしていて、厳しい壮年の魔法使いの石像だ。

 石像の足の間には、少女が横たわっていた。

 他の兄弟と違って長く真っ直ぐに伸びた豊かな赤毛が床に散らばっている。ジニーだ。ソフィアにとって身近な妹とも言える存在が、冷たい床に横たわっていた。

 駆け寄りたくても、体が動かなかった。ソフィアはこの感覚に覚えがあった。夢でクィレルの最期を見た時と同じだ。駆け寄りたいのに、一歩と近づくことができない。

「ジニー!」

 壁に反響して、ハリーの叫びに近い大声が木霊した。部屋の入り口にはハリーがいて、ジニーに一心不乱に駆け寄ってきた。ぶつかると思ったが、ハリーはソフィアの体をすり抜けていった――。

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