▼ 決闘クラブ4
「さすが努力の天才ね」
ソフィアがセドリックを誉めちぎれば、セドリックは頬を赤くして照れた。
「こういう時、努力家だって褒めてくれるのは、 ソフィアくらいだよ」セドリックがはにかみながら言った。
「だって、天才は九十九%の努力と一%の閃きだってマグル学でも言ってたわ。努力なしで何でもできる人がいる訳ないじゃない」ソフィアは肩をすくめた。「セドリックが無言呪文を練習してくれていたおかげで助かったわ」
「それは良かった」セドリックも微笑んだ。
ソフィアとセドリックは勝負がついたが、周りではまだまだ武装解除の術以外で生徒同士の決闘が盛り上がっていた。
レティとギリアンが凄絶な閃光の撃ち合いをしている。フレッドとジョージもコウモリ鼻糞の呪いを放ったり、クソ爆弾を使って戦っている。(今の双子の近くには行きたくないとソフィアは思った。心なしか、周りの生徒も双子と距離を空けている。)さらに向こうで、ハリーは奇妙なタップダンスを踊り、マルフォイは笑い転げている。普段の二人から想像がつかないほど、とても楽しそうで、仲が良さそうに見えた。
「やめなさい! ストップ!」
ロックハートは叫んだが、スネイプが杖を持って乗り出した。
「フィニート・インカンターテム! 呪文よ 終われ!」
スネイプが叫ぶと、ハリーは踊りをやめ、マルフォイも笑うのをやめた。ソフィアは、ハリーの踊りを見てマルフォイが笑っているのかと思っていたので、呪いだったのかと驚いた。
ネビルもジャスティンもハァハァ言いながら床に横たわっていて、そのすぐ近くでロンは蒼白な顔をしたシェーマスを抱きかかえて、しきりに謝っていた。
スリザリンの女の子がハーマイオニーにヘッドロックをかけ、ハーマイオニーは痛みでヒーヒー言いながら床を叩いていた。魔法使いの闘いというよりも、マグルのプロレスそっくりだった。
「むしろ、非友好的な術の防ぎ方をお教えするほうがいいようですね」
ロックハートは、大広間の惨状に放心しているようだった。大広間の真ん中に面くらって突っ立ったまま言った。
「さて、誰か進んでモデルになる組はありますか?――ロングボトムとフィンチ‐フレッチリー、どうですか?」ロックハートが聞いた。
「ロックハート先生、それはまずい」スネイプがこの日一番の笑顔を見せた。「ロングボトムは、簡単極まりない呪文でさえ惨事を引き起こす。フィンチ‐フレッチリーの残骸を、マッチ箱に入れて医務室に運び込むのが落ちでしょうな」
ネビルの丸顔が赤くになった。全校生徒の前で侮辱するなんて、スネイプはなんて酷いんだろうかとソフィアは思った。去年ソフィアが熱々の混乱薬を頭から被った時に、スネイプが心配どころか減点した悪魔のような行いを思い出した。
「マルフォイとポッターはどうかね?」スネイプは口元を歪めて笑った。何か企んでいるようだった。
「それは名案!」ロックハートが喜んだ。
ハリーとマルフォイのペアでデモが行われることになり、二人が大広間の真ん中へ出てきた。ソフィアやセドリックも含め、他の生徒みんな下がって二人のために空間をあけた。
ハリーは頼りないロックハートの指導を受けて、困り切った表情をしている。(ロックハートは、ハリーの見本として杖をクネクネさせて最終的にとり落とす真似を見せていた。)
「一――二――三――それ!」と号令がかかった。
マルフォイが号令と共に蛇を繰り出す。杖先が炸裂し、先から長く黒い蛇がにょろにょろと出てきたのを見て、ソフィアはぎょっとした。何故か、全く記憶にない石造りの蛇の柱がある部屋の光景が脳裏をよぎった。肩を揺らしたソフィアを庇うように、セドリックは少し前に出た。
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