▼ 決闘クラブ3
ソフィアはちらちらとスネイプを見た。武装解除呪文は、以前から練習していたが、今年の闇の魔術に対する防衛術の先生が「あれ」なだけに、きちんとした先生から習えていない。スネイプに少しでも直してもらえないだろうか。 ソフィアは自身の杖をぎゅっと握り直した。
スネイプはこちらへ来ると、興味なさそうにギリアンとレティ、セドリックと ソフィアとペアに指定した。近くのハッフルパフの一年生も適当に組み分けられて行く。
スネイプはそそくさとこの場を離れ、ハリー達の方へ吸い寄せられるように歩いていった。スネイプが今にもスキップしそうに見えた。
「手加減しないでよ」ソフィアが言った。
「手加減したら、吹き飛ばされかねないからね」セドリックは悪戯っぽく笑った。
「相手と向き合って! そして礼!」
壇上に戻ったロックハートの号令に従って、 ソフィアとセドリックは互いに向き合い、目をそらさずに少し頭を下げて礼をした。
「杖を構えて!」ロックハートが声を張り上げた。
目の前で杖を構えるセドリックの目は真剣だ。きっと手加減なんてせずに ソフィアの相手をしてくれるだろう。自分の実力を試すのに、こんなに素晴らしい相手はいない。気持ちのいい緊張感は、ソフィアの気持ちを高揚させた。
「私が三つ数えたら、相手の武器を取り上げる術をかけなさい。武器を取り上げるだけですよ――一、二、三――」
「インカーセラス!」
「インセンディオ」
ソフィアもセドリックも、武装解除の術を使う気が全くなかった。ソフィアの杖先から飛び出た縄が、セドリックに襲い掛かった。セドリックが軽く杖を振り、縄が燃やさる。セドリックに防がれてしまうことは、ソフィアの想定内だった――なにせ、セドリックは学年で一番と言って良いほど優秀な生徒だった。
「武器を取り上げるだけだと言ったのに!」
ロックハートが慌てて叫ぶ声が遠くから聞こえた。
「エイビス! オパグノ!」
「コンファンド!」
ソフィアは杖を鞭のように振って、出てきた鳥をセドリックに襲わせた。セドリックの呪文で、鳥達が進路を見失いお互いを攻撃し始める。セドリックが何か仕掛けて来る前に畳み掛けたかった。
「エクスペリ――」
「エクスペリアームス」
ソフィアが唱え切る前に、セドリックが杖を振るった。赤い閃光が視界いっぱいに広がり、ソフィアは吹き飛ばされる。先ほど、ロックハートが壁に叩きつけられた光景を思い出した。背中への衝撃を覚悟して、ぎゅっと目を瞑った。
衝撃の代わりに、ふわりと浮遊感に襲われた。ソフィアが目を開けた時には、体はふわりと浮かび上がり、ゆっくりと地面に降下していた。何の衝撃もなく、地面に着地する。
セドリックが心配そうにソフィアのもとへ駆け寄って来た。セドリックが差し伸べてくれた手に捕まると、引っ張ってソフィアを立たせてくれた。
「痛くなかった?」セドリックが心配そうに、ソフィアの頭の先から爪先まで視線を往復させながら言った。
「セド、何かしてくれたの?」ソフィアが驚いたように聞いた。
「間に合いそうになかったから、モリアーレを唱えたんだ」
ソフィアは驚きで開いた口が塞がらなかった。モリアーレを唱える声なんて、ソフィアには少しも聞こえなかった。
「セド、あなた無言呪文使えたの?」
「いや、成功率は五分五分ってところだよ」セドリックは肩をすくめた。「マクゴナガル先生が、無言呪文に挑戦してみたらって個別に課題を出してくれたんだ」
ソフィアはあっけに取られた。セドリックは、あれだけの授業で出された課題をこなし、クィディッチの練習もしている。それに加えて無言呪文までやっていたとは、信じられなかった。
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