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▼ 決闘クラブ1

 玄関ホールを歩いていると、掲示板の前にちょっとした人集りができていて、貼り出されたばかりの羊皮紙を読んでいた。人混みの中からレティが出てきた。目を輝かせて、興奮した様子だった。

「今夜から、『決闘クラブ』が始まるらしいわ!」

 レティが声を弾ませて言った。

「決闘クラブ? 決闘の練習をするの?」

「勿論参加するわよね?」レティな悪戯っぽく言った。「部屋の怪物と決闘するかもしれないんだから、備えときましょ?」

「へえ、僕も参加したいな」

 セドリックも乗り気なようだ。確かに、四年生にもなると、プロテゴやレダクトなど決闘に使えるような呪文も覚えている。決闘に必要な最低限の知識はあるのだから、試したいと思うのも当然だろう。

「いいな、俺も参加する」ギリアンが頷いた。

「私、今夜はやめとく……古代ルーン文字学の課題が終わらないの……」マルタが絶望的な声を出した。

「セドリックは大丈夫なの?」レティが聞いた。

「もう終わってるから大丈夫」セドリックが頷いた。

「お前、普通の数倍課題あるのに、なんでこなせてるんだよ」ギリアンは少し引いたようだった。

 その晩、八時にソフィアたちは急いで大広間に向かった。

「誰が教えてくれるのかな」セドリックが呟いた。

「フリットウィックじゃないかしら」レティが言った。「若い頃は決闘チャンピオンだったらしいもの」

「ロックハートじゃなければ誰だって良いわ」ソフィアが言った。

「俺はスネイプじゃなければ誰でも良いね」

 ギリアンが肩をすくめた。彼はよくスネイプに減点されているので、仕方のない気もした。

 大広間では、いつもの食事用の長いテーブルが取り払われ、一方の壁に沿って金色の舞台があった。舞台は何千本もの蝋燭に照らされている。学年関係なく、沢山の生徒が集まっていた。こんなに生徒が集まっている光景は、組み分けの儀式以来だ。おのおの杖を持ち興奮に顔を輝かせている。

 ギリアンとソフィアがうめき声を上げた。

 ギルデロイ・ロックハートが舞台に登場したのだ。きらびやかに深紫のローブをまとい、後ろに、誰あろう、いつもの黒装束のスネイプを従えている。

「凄い組み合わせだね。大丈夫かな」

 セドリックが困ったように言った。セドリックが心配しているのは、ロックハートの安否か、決闘クラブの進行なのかはソフィアには分からなかった。

「みなさん、集まって。さあ、集まって、みなさん、私がよく見えますか? 私の声が聞こえますか? 結構、結構!」

「ダンブルドア校長先生から、私がこの小さな『決闘クラブ』を始めるお許しをいただきました。私自身が、数え切れないほど経験してきたように、自らを護る必要が生じた万一の場合に備えて、みなさんをしっかり鍛え上げるためにです。――詳しくは、私の著書を読んでください」

 ロックハートは、授業の中でさえ演劇指導しかしていないのに、何故こんなクラブを始めようと思ったのか不思議だった。

「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」

 ソフィアはたまらずロックハートを尊敬の眼差しで見つめた。ロックハートは満面の笑みだ。後ろにいるスネイプの顔は、意地悪く上唇がめくれ上がって、目線だけで人を殺せそうだった。


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