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▼ プレゼント7

 六十対十。ハッフルパフは劣勢だった。キーパーの調子が悪いのか、レイブンクローもハッフルパフもシュート本数は大して変わらないのに、どんどん点差が開いていく。

 セドリックがピッチの反対側に、まるで矢のように、一直線に鋭く飛んでいく。

「スニッチを見つけたんだわ!」ソフィアが叫んだ。

 セドリックが手を伸ばしたところで、アデラの打ったブラッジャーに邪魔をされた。セドリックがブラッジャーを避けた時には、スニッチは見失ってしまった。

「惜しい!」ジニーが叫んだ。

 ジニーが頬を紅潮させて叫んでいる姿に、ソフィアはギリアンと目を見合わせた。すっかり試合を楽しんでいるようだった。

「少しは元気出たみたいだねえ」

 マルタが楽しそうに、ソフィアに耳打ちした。

 ソフィアたちがジニーの姿に喜ぶのと反比例して、ハッフルパフの空気は重くなっていた。百十対二十。絶望的な点差だ。

 セドリックが急降下した。スニッチを見つけたのだろうかと沸き立った。凄い勢いで急降下していくセドリックのすぐ後を、レイブンクローのシーカー、カルヴィン・ピッツも追っていく。

 地面まであと数メートルのところで、セドリックは突如スピードを緩めて上昇した。セドリックの後を追いかけていたピッツがスピードを殺しきれずに地面に突っ込んだ。

 レイブンクローの観客が悲鳴を上げた。ピッツは肩を脱臼し、頭を強打したようだった。タンカに載せられて運ばれて行った。レイブンクローはこのままシーカー抜きで試合しなくてはいけない。

「あいつ、もしかして狙ってやった?」ギリアンが呟いた。

「まさか、セドリックが相手を怪我させようとするわけないでしょう」ソフィアが非難した。

 レイブンクローとの点差が百二十点に広がった時、セドリックがスニッチを捕まえた。ハッフルパフが大歓声を上げた。

「今日は誘ってくれて有難う」

 競技場からの帰り道、ジニーが玄関ホールで立ち止まると、ソフィアたちを見た。顔を赤くして、少し恥ずかしそうにしていた。

「ジニー!」パーシーが大広間の入り口でジニーを呼んでいた。ジニーがパーシーのところへ行こうと踏み出して、一度振り返った。

「みんな今度一緒にご飯食べてくれる?」ジニーが恐る恐る聞いた。

「勿論よ!」ソフィアはジニーの両手を握り、食い気味に答えた。

「大歓迎だわ」レティが嬉しそうに笑った。

 ジニーが少しでも元気が出たなら、こんなに嬉しいことはなかった。ソフィアたちは今日の試合のセドリックの活躍について話しながら、ハッフルパフのテーブルに着いた。

 良いことは続けて起こるものらしい。その日、ソフィアにとって良いことがもう一つあった。夕食の時に、父ドウェインから返事が来たのだ。ソフィアはガニメドへの労いもそこそこに、適当にパンの切れ端をガニメドに与えると、手紙をひっつかんで寮の部屋へと急いで戻った。

 寝室に他の誰もいないことを確認して、ソフィアは手紙を開いた。そこにはドウェインの整った字でソフィアへの心配やクリスマスについて書かれていた。


 世界一大切な娘、 ソフィアへ

 手紙を読みました。
 返事が遅くなったことを、まず謝らさせてほしい。
 すまないね。
 
 まず、クリスマス休暇は帰って来なさい。
 ソフィアの手紙の後、生徒が一人石になったと聞いた。魔法省動きかねない事件が起こっていることを念頭に置くように。
 今のホグワーツは少し危険だと思った方がいい。

 継承者の敵が何か断言はできないが、過去似たような事件ではマグル出身の死者も出ている。(他の生徒には言わないように。パニックになるからね)
 詳しいことは家で話します。
 
 ソフィア、君はアスター家の娘だから狙われることはないだろう。
 ただ、用心に越したことはない。
 一人では出歩かないように。特に夜間の外出や禁じられた場所に行くような、愚かな真似はしないこと。
 気をつけて残りの学期を過ごしなさい。

 愛を込めて。

 ドウェイン


 ソフィアは、気分がしょぼしょぼと萎んでいくような気がした。ドウェインは、ソフィアが想像した以上に事態を深刻に受け止めているようだった。今は、一人と一匹が石化しただけだが、事件が続けば死者が出る恐れもあるというのだろうか。

 ソフィアは、昔も秘密の部屋が開かれたことに驚いた。スリザリンの継承者が以前も現れたというのだろうか。昔と今で犯人は違うのだろうか。昔の犯人は捕まったのだろうか。昔の事件はどうやって解決したのだろう――ソフィアの頭の中に疑問が溢れた。

 ソフィアは休暇の学校に滞在する名簿に名前を書くつもりでいたが、今年は書かなくて良いことに僅かに微笑んだ。少しだけ、不安が溶かされるようだった。


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