▼ プレゼント5
ソフィアはポケットからちらりとセドリックから預かった靴下を出して、笑ってみせる。この妙な空気を変えたかった。
「来週までのお楽しみにね」
「楽しみにしてるね」
セドリックが微笑んだ。いつもと変わらない様子に戻って、ソフィアは自分でも知らずのうちに安堵の息を漏らした。
ソフィアたちが寮に戻ると、予想していたようなはしゃいだ空気はどこにもなかった。てっきりハニーデュークスやゾンコで買った商品で大騒ぎになっていると思っていたので、ソフィアは驚いたように目を丸くした。
「どうしたの?」
ソフィアは、近くにいたマルタに声をかけた。マルタも普段の元気の良さが形を潜めている。
「コリン・クリービーが石になったって」マルタが言った。「いまは医務室にいるらしいけど……」
コリン・クリービーは、ソフィアも以前見かけたことがあった。ハリーのファンとして有名な、グリフィンドールの一年生だ。マグル生まれだったはずだ。
マルフォイが言っていた、継承者の敵はやはりマグル生まれを指すのだろうか。ソフィアは不安で眉を下げた。
ミセス・ノリスに続いて出た犠牲、その上はじめての生徒の犠牲に、ハッフルパフだけでなく城中が重苦しい雰囲気を放っていた。
ジャスティンたちはすっかり怯えてしまったようで、グループで城の中を移動するようになった。一人で勝手に動くと襲われると怖がっているようだった。ソフィアは一度泣きそうなジャスティンに頼まれて、忘れ物を取りに一緒に呪文学の教室まで行ったこともあった。
医務室でクリービーが死んだように横たわっている、まるで死んだように冷たい――様々な噂が城中を飛び交っている。疑心暗鬼がまるで霧となって城中を包み込んだようだった。誰が継承者なんだと、お互いに疑いの眼差しを向け合っている。
ジニーは、コリンと仲良かったらしく落ち込みが激しかった。朝の大広間で見かけたジニーはますます憔悴していた。
「ジニー、元気?」
ソフィアは言った瞬間、後悔した。どう見ても元気ではない。ジニーの溌剌とした明るさが、今は一欠片も見当たらなかった。
「うん」
ジニーは頷くと、そそくさとソフィアから離れていった。
「あいつ、最近本当落ち込んでるんだよ」
フレッドが言った。ソフィアは、急に背後すれすれにウィーズリーの双子が立っていたので驚いた。
「だからさ、励まそうと思って」ジョージが抱えていたおでき薬を見せた。「おできだらけになったり、髭を生やしたりして交互に飛び出してみようと思ってるんだ」
「笑えば元気になること間違いなしだもんな」フレッドも頷いている。
「あなたたちは、情緒を前世に置いてきちゃったの?」
ソフィアが真剣に聞いた。落ち込み切った相手に、そんなハイテンションで迫られても逆効果に違いない。
「俺たちの妹だからな、効果てきめんだ。」フレッドが自信満々に言った。
「前、俺が間違えてフレッドに髭を生やした時に、ジニーすげえ笑ってたんだぜ」ジョージも自信満々に言った。
双子が、素晴らしい計画は今は実行しないべきだとソフィアがいくら言ったところで、二人には全く効果がなかった。
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