▼ プレゼント4
棚には、色とりどりの靴下が並んでいる。もこもこの毛糸編みの靴下から、レースの靴下まで素材も様々だった。
「これなら、制服のローブにも合うかな」
セドリックは棚にある靴下をいろいろ手にとって悩んでいるようだったが、暫くして黒地に金と銀の星が点滅する靴下を選んだ。
「わあ! 可愛い!」ソフィアは手を叩いて喜んだ。
「それはなにより」セドリックがキュッと口角を上げた。
ソフィアのはしゃいだ様子にセドリックも笑った。二人でレジに行って、買った。
「カップルさん」店主がにこやかに言った。「ほら、お揃いでどうぞ。プレゼントだ」
同じ靴下をプレゼントされ、ソフィアとセドリックは笑顔を引っ込めて真っ赤になった。
「あげるよ」
店を出ると、セドリックが靴下をソフィアに渡した。
「面倒くさがらないで、クリスマスにラッピングして送ってよ! 開封作業が私の一年で一番のの楽しみなのよ!」
ソフィアが大げさに言った。
「実は、クリスマスプレゼントはもう見つけたんだよ。当日楽しみにしてて」セドリックが悪戯っぽく笑った。「靴下は、今日のお礼かな」
「本当にいいの?」ソフィアはセドリックを伺うように見た。
「うん、僕とお揃いでよければだけどね」
「有難う。これ、来週の試合で履いて応援するわ」
ソフィアは貰ったばかりの靴下を大切に抱えた。
「なら、僕も試合中履こうかな」セドリックも微笑み返す。
「セドリックの分も貸して」ソフィアが言った。
「二足欲しくなっちゃったの?」セドリックが悪戯っぽく笑いながら、ソフィアに靴下を渡した。ソフィアは受け取った靴下をそのままポケットにしまい込んだ。
「おまじない、かけといてあげる」
「忘れて試合に間に合わないとかやめてね」
「失礼ね!」
ソフィアは、苦笑いするセドリックの背中をバシバシと叩いた。セドリックは楽しそうに笑っている。ソフィアはすぐに、本気で心配されたのではなく、揶揄われただけだと気づいた。セドリックの背中を叩く力を強めた。
声を上げて笑い出したセドリックを見て力が抜ける。ソフィアはつられたように笑いながら、セドリックを見た。どこをどうみても、無口ではない。これが無口なハンサムとよその寮の女子に噂されているのだから、ソフィアには不思議だった。ソフィアが知っているセドリックは、いつも楽しそうにしていて、人を揶揄うことも多い。なにより優しい。
「セドって重度の人見知りよね。あなたが無口って噂されてること、いまだに信じられないわ」
ソフィアが言った。セドリックは、不思議な顔をしてソフィアを見た。考えるように空を見上げている。
「うーん、そんなつもりはないんだけどな」セドリックが言った。「でも、ソフィアたちといると、沢山話したくなるのは間違いないよ。楽しいからね」
「でも、私お喋りなセドの方が好きだわ。他の子には、クールでかっこいいなんて言われてるみたいだけど」
「僕も、この自分の方が好きだな」
セドリックが、目を細めて眩しそうにソフィアを見つめた。ソフィアは思わず黙りこくった。なんだか恥ずかしい。妙に居心地の悪い雰囲気だとソフィアは思った。
「じゃあ、私が友達でよかったって泣いて感謝するようなおまじないかけるわね」ソフィアが言った。
prev / next