▼ プレゼント3
鷲の羽など高級感のあるものから、カラフルなどこか南国を思わせる鳥の羽を使った珍しいものまである。所狭しと棚に並べられていて、いくつかの高級品だけガラスのケースの中に仕舞われていた。
奥の方には、関連商品として日記帳やメッセージカード、羊皮紙が置かれている。他にも、インクも様々だった。
「これ、マルタが喜びそうだわ」
ソフィアが色の変わるインクを手に取った。マルタは、もう魔女になって四年目だが、いまだにソフィアたちが当たり前と思ってるような変わった物に目を輝かせる。このインクは、喜びそうだとソフィアは思った。
「マルタだったら、これでレポート書きかねないね」セドリックが肩を揺らして笑った。「誰かさんと一緒で」
「揶揄わないで」ソフィアはセドリックを小突いた。
ソフィアが、変身術の授業でマクゴナガルに対してカラフルなレポートを提出したことを思い出した。あの時のマクゴナガルの激怒ぶりといったら、それはもう酷かった。
「ごめんごめん。ソフィアはインクじゃなくて羽根ペンだったね」セドリックは慌てて話を変えた。「ほら、これもレティに良さそうだ。
セドリック雉羽根のペンを手に取った。雉の尾羽を使った羽根ペンで、羽根がとても大きい。見た目は美しいが、あまり実用的ではない。(なにせ書いてる時に羽根が鼻先をくすぐりそうだ。)洗練されたデザインを好むレティが喜びそうだとソフィアは思った。
「とっても喜びそうだわ!」
ソフィアが頷くと、セドリックは満足げに笑って会計へと商品を抱えていった。
「ギリアンへのプレゼントはどこで買うの?」
「ゾンコあたりで買おうかなって」
ソフィアとセドリックは店を出て、吹きつける風の冷たさに身を縮こませながらゾンコの店へと急いだ。店内は、羽根ペン専門店と違ってかなり混雑していた。棚には、臭い玉やくそ爆弾、しゃっくり飴がこれでもかと積まれている。
「もう決めてあるんだ。ギリアンだからね」
セドリックは、肩をすくめた。先ほどのレティとマルタと違ってあまり悩まずに、臭い玉としゃっくり飴を買った。
「その悪戯道具の使い先って、あなたじゃないの?」
店の外に出て、ソフィアの最もな疑問にセドリックは固まった。立ち止まってしまったセドリックを、何歩か進んだところで振り返る。ソフィアがニヤニヤと笑ってセドリックの顔を覗き込めば、セドリックは難しそうに眉間にしわを寄せて考え込んでいた。
「腹を括るよ」
セドリックの諦めたような声に、ソフィアは腹を抱えて笑った。
「次は私へのプレゼント?」ソフィアが図々しく聞いた。
「そうだね。今日の山場だ」セドリックが笑った。「行きたいお店はある?」
ソフィアがセドリックを引っ張って連れて来たのは、グラドラグス魔法ファッション店だ。マグルの洋服を着る ソフィアの世代には、少し着るのを遠慮するデザインのローブが多く置いてある。
店のドアを開けて入れば、カランコロンとベルが鳴って、店主に来客を告げる。お客さんはソフィアたち以外いなかったようで、店の奥にいた店主が愛想よく「どうぞごゆっくり」と笑った。
「こういうローブ好きだったっけ」セドリックが困り顔で、派手な色合いのローブを見た。
「十数年後は分からないけど、今は趣味じゃないわね」
ソフィアは否定して、隅にある靴下コーナーへ連れていった。
「ここの靴下、前から気になってたの」
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