immature love | ナノ


▼ プレゼント2

 朝食後、マントやスカーフにすっぽりくるまったソフィアとセドリックは、ホグズミードに来た。

「来週試合なのに、ホグズミードに来てよかったの?」

 ソフィアは今更不安になって聞いた。

「無理に練習を詰め込んだって仕方ないからね」セドリックが肩をすくめた。「今日は息抜きだよ」

「昨日も息抜きしてたじゃない」

 ソフィアは揶揄うように笑った。昨日の大雨のせいで、地面は多少ぬかるんでいる。歩くたびにピチャピチャと音がした。いつもなら不快に感じる筈なのに、セドリックが隣を歩いているだけで、不思議な事に気分は上を向いていく。

「どこ行きたい?」ソフィアが聞いた。

「スクリベンシャフトの店に行ってもいい?」セドリックが言った。

「ダメよ」

 ソフィアが間髪入れずに却下すると、セドリックは不満げに少し頬を膨らませた。可愛い仕草が何故か似合うので、ハンサムはずるいとソフィアは思った。ソフィアたちの横を通り過ぎた女子たちが、セドリックを見てくすくす笑いの発作に襲われている。

「ふふふ、嘘よ。なんのお店なの?」

 ソフィアは楽しげに笑いながら聞いた。

「羽ペン専門店だよ。去年のソフィアへのプレゼントもここで買ったんだ」

「オルゴールが鳴るカードのこと? あれ、本当に気に入ってたのよ」

「ううん、砂糖羽ペンの方。カードは、僕が魔法かけたんだよ」

「セドリックって天才ね。忘れてたわ」

「大げさだよ」

 セドリックは褒められて恥ずかしそうに頭を掻いている。ソフィアは、ちっとも大げさに言ったつもりはない。

「いいえ、天才よ! あんなに授業を取ってたら、出席できない授業に普通なら落第するでしょう?」

 ソフィアは昨年のセドリックのテスト結果を思い出しながら言った。学年でも首位の成績だ。ソフィアは、なぜセドリックが被っていて出席できない授業のテストも問題なくこなせるのか不思議だった。

「授業は一応無遅刻無欠席なんだけどね」セドリックが反論した。

「いくら私でもそこまで簡単に騙されないわよ」

 ソフィアが口を開けて笑っていると、セドリックはソフィアを見て微笑んだ。

「僕は本当のことを言ってるのにな」

 セドリックが、悪戯っぽく肩をすくめた。

 ソフィアとセドリックは暫くぬかるんだ地面を歩いた。時々、ソフィアが転けそうになる度に、セドリックが腰に手を当てて支えてくれた。

「あなたの隣に歩いてると女子の嫉妬が怖いのよ」

 ソフィアはそわそわとした様子で言った。セドリックと二人なんて、デートだと思われて嫉妬されかねない。

「僕の隣って」セドリックが肩をすくめた。「今更じゃないか」

「それもそうね」ソフィアは納得したように頷いた。

 ソフィアは、誤魔化すようにポケットに手を突っ込んだ。ソフィアとセドリックは仲がいいことは周知の事実だ。二人は一年生の初日から仲がいい。まるでこれでは自分がセドリックを意識しているようだと、ソフィアは少しの気まずさを感じた。

 途切れた会話を助けるように、スクリベンシャフトの店が見えてきた。こじんまりとした店で、入り口が小さい。ソフィアとセドリックと同じくらいの背丈だ。これでは、ハグリッドサイズの客はいないだろうとソフィアは思った。


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