▼ クィディッチ3
「よければ、クィディッチ一緒に観ようよ」セドリックが揶揄いを滲ませて付け加えた。「嫌なら、ロジャーは断るよ」
「言っておくけど、大半の女子は俺と観戦したいんだからな」
ロジャーが髪をかき上げた。不満そうに口を曲げた、責めるようにソフィアを指差した。以前試合観戦を誘われた時に、ロジャーがいると女子に嫉妬されることを理由に断ったことをソフィアは思い出した。セドリックとロジャーは仲が良い。もしかすると、伝わっているのかもしれない。
「だって、タイプじゃないんだもの」
ソフィアはふざけたように言うと、ロジャーは「聞いてねえよ」とからから笑った。
「で、観に行くの? どうせ他と約束してねえだろ」
ロジャーの質問に、ソフィアは観念したように頷いた。
「スリザリンのやつらが負ける姿を見るのが今から楽しみだ」
ロジャーが意地悪い笑みを浮かべながら言った。セドリックは、ロジャーの言葉にニヤリと笑うだけだ。ソフィアたち三人は、寝ぼけ眼で大広間に来たギリアン、レティ、マルタも捕まえて、クィディッチ競技場に向かった。
観客席はいつも以上に混んでいた。ハッフルパフもレイブンクローの生徒も大半は観戦に来ているようだ。グリフィンドール選手がグラウンドに入場すると、大歓声に包まれた。ロジャーが言った通り、みんなスリザリンが負けるところを見たくてたまらないのだ。
マダム・フーチの笛が鳴った。試合開始だ。十四人の選手が雲が分厚く敷かれた空に高々と飛翔した。
「キャア!」
ソフィアは悲鳴を上げた。開始早々、真っ黒の重いブラッジャーがハリーめがけて突進した。ハリーのすぐ近くを掠めたが、怪我はしていないようだった。
ジョージが棍棒を手に、ハリーのそばを猛スピードで通り過ぎ、ブラッジャーをスリザリンのエイドリアン・ピュシーめがけて打ち返した。
「やれ!」マルタの声には凄みがあった。
ジョージが棍棒で強烈にガツンとブラッジャーを叩くのを、マルタが嬉しそうに観ている。ところが、ブラッジャーは途中で向きを変え、またしてもハリーめがけてまっしぐらに飛んできた。
ハリーがかわし、ジョージがそれをマルフォイめがけて強打した。ところが、ブラッジャーはブーメランのように曲線を描き、またもやハリーを狙い撃ちするように軌道を変えた。
「おかしいな」セドリックが呟いた。「普通なら、選手全員まんべんなく狙うのに」
ハリーは全速力でブラッジャーから逃げ回っている。ハリーが飛んでいく先に、フレッドが先回りして待ち構えていた。フレッドが力まかせにブラッジャーをかっ飛ばした。ブラッジャーは見事にハリーから逸れていった。
「カッコいい!」ソフィアは溜まらず叫んだ。
「やっつけたぞ!」 フレッドが満足げに叫んだ。
おかしなことに、ブラッジャーはまたもや進路を変更し、ハリーめがけて突進し始めた。フレッドとジョージは、ハリーすれすれを飛んでブラッジャーを何度も何度も打ち返している。
雨が降り始めた。天気が悪くなるのと同じように、戦況も悪化した。アンジェリーナ・ジョンソンのゴールが、もう一つのブラッジャーに邪魔をされてゴールが出来なかった。フレッドとジョージがハリーに付き纏うブラッジャーにかかりきりなので、仕方のないことだった。その上、相手は全員最新の箒に乗っているせいで、スピードが段違いだった。
マダム・フーチのホイッスルが鳴り響いた。グリフィンドール・チームからタイムが要求されたらしい。円陣を組んで作戦会議をしている。雨はますます酷くなった。
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