▼ クィディッチ2
「君は素晴らしいクィディッチプレイヤーでしょうが、今の段階で王子と自称するには早いですよ。もちろん、いずれはサイン入り写真を配るようなことになるかもしれませんがね」
「自称してませんし、配りません」
セドリックがもごもごと否定しているが、ロックハートは完全に無視した。
「そう悲しそうな顔をしなさるな! まだその段階ではないでしょうが、練習を続けていればそんな日が来るかもしれない」ロックハートは白い歯を見せて笑った。「君の個人訓練だってお付き合いしますよ」
「いえ、間に合ってます。お気遣い有難うございます」
セドリックが失礼なほど食い気味に誘いを断った。ソフィアは隣で吹き出しそうになり、変な噎せ方をする羽目になった。ギリアンは我慢せず、腹を抱えて笑っている。
セドリックがロックハートに個人訓練なんてされた日には、選手をクビになりかねないだろう。
「セド、あなたのサイン入り写真欲しいわ」廊下に出て、ソフィアがからかうように言った。
セドリックは慌てて辺りを見渡し、ロックハートに聞かれていないか確認していた。
「嘘でもやめてくれよ!」
セドリックの声は悲鳴に近かった。
土曜日の朝、レティとマルタはまだ寝ている中、ソフィアは一人で寝室を抜け出した。朝食を食べに大広間に行くことにした。
大広間には、グリフィンドール・チームの選手塊まって座っていた。みんな緊張した面持ちで、フレッドとジョージでさえ笑わずに黙々と朝食を食べているようだった。
今日は、グリフィンドール対スリザリンのクィディッチの試合だが、去年はあそこまで重苦しい雰囲気を漂わせてはなかった。競技用最高速度の箒を全員分揃えているチームと戦うのだから、それも当然かとソフィアは納得した。ソフィアは話しかけることはやめようと、誰もいない長テーブルで一人座った。
「やあ、ソフィア」
フレッドがふらりと近寄ってきて、ソフィアの隣に腰掛けた。
「応援に来てくれるんだろ?」
フレッドが首を傾けて、ソフィアを上目遣いに見た。フレッドが可愛い。ソフィアの心臓がうるさく鳴り始めた。
「勿論よ」ソフィアは頷いた。「幸運を祈ってるわ」
「よし!」フレッドが勢いよく立ち上がった。「元気出た」
フレッドは、明るくからからと笑うと、ソフィアの頭を撫でた。
「俺の活躍、しっかり目に焼き付けろよ」
フレッドがソフィアにウィンクした。グリフィンドール選手たちのいるテーブルに戻っていく。ソフィアは、髪を撫でつけながら照れたように俯いた。
「おはよう、ソフィア」セドリックが声をかけた。
セドリックの隣にはロジャー・デイビースがいた。同じ四年生で、レイブンクローのチェイサーだった。
明るい茶髪で、肩までかかるくらい長く、ふわふわと揺れている。ヘーゼルの瞳がきらきらしていた。ロジャーは、校内ではモテ男として有名だった。(女好きとしても有名だった。)
「よお。お熱いね」
ロジャーが口笛を吹いて、ニヤリと笑った。
「そう見えた?」
ソフィアは片眉を上げる。ロジャーは笑って、ソフィアの前に腰掛けた。セドリックは、先ほどまでフレッドのいた椅子に座る。
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