immature love | ナノ


▼ ハロウィーン・パーティー7

 二階を歩いていたところで、走っているハリー、ロン、ハーマイオニーに遭遇した。向こうはソフィアたちに気づいた様子もなく、階段を駆け上がって行く。

「誰かを殺すつもりだ!」

 ハリーが切羽詰まったように叫んで先頭を突っ走り、ロンたちは困惑したように着いていく。その様子を見て、フレッドとソフィアは顔を見合わせた。ハリーたちは(ウィーズリーの双子とは別の意味で)いつも騒ぎの中心にいるが、今回も何かあったのだろうか。

「いくぞ、ソフィア!」

「待ってよ!」

 フレッドが追いかけようぜと言ってソフィアの手を掴んだ。フレッドは、昔から何かに夢中になるとソフィアの手を掴んで走り出す。小さい頃にダイアゴン横丁で走らされ転んだことを思い出し、ソフィアは手を離そうかと悩んだ。

 しかし、フレッドは走りながらもソフィアの足幅に合わせていた。足が長い分小刻みに足踏みのように前を走るフレッドの後ろ姿がカッコ悪くて、ソフィアは笑った。走る姿がこんなにもカッコ悪いのに、ソフィアには不思議と今のフレッドがとてもカッコよく見えた。

 そんな楽しさからくる笑顔もすぐに凍りついた。角を曲がった時、ハリーたちが呆然と立ちすくんでいたからだ。ソフィアはこの先起こる出来事を見たことがあった。

 ソフィアはフレッドの手を強く握り足が止まった。三人のところへ行こうとしないソフィアを、フレッドが不思議そうに振り返った。

 怯えた表情を浮かべるソフィアに気が付いたのか、フレッドはソフィアを守るように半分前に出た。気になるだろうに、壁へ近づこうとはしなかった。

 フレッドの背中越しに見える廊下の壁は、鈍い光を放つ文字が書かれている。遠目に見える文字を、フレッドは小声で読み上げた。


  秘密の部屋は開かれたり
  継承者の敵よ、気をつけよ


「ロン、離れた方がいい。この場にいるのは大分マズいぜ」

 壁のそばで呆然と立ちすくむハリーたちに、フレッドが遠目から声をかけた。

「ハリー、フィルチがくるわ。疑われちゃう」

 ソフィアが絞ったように、震えた声で言った。

「フィルチが?」

 不思議そうにソフィアを見るフレッドに、ソフィアはただ首を振る。ざわめきが段々と聞こえてくる。小さな囁きが沢山集まり、大きな音となってその気配を知らせてくれた。集団が廊下の両端から現れた。楽しげな声は、ミセス・ノリスに気づいたのか静まり返った。

 人の壁に隔離されるように、ポツンと廊下に立ちすくむハリーたち三人を呆然と見つめた。

「継承者の敵よ、気をつけよ! 次はおまえたちの番だぞ、『穢れた血』め!」

 ドラコ・マルフォイが大声で叫んだ。夢と全く同じだ。人垣を押しのけて最前列に進み出たマルフォイは、遠くから見てもとても楽しそうに見えた。フレッドがソフィアの手を握る力が一瞬強まった。

「なんだ、なんだ? 何事だ?」

 アーガス・フィルチが肩で人混みを押し分けてやってきた。ソフィアは押し退けられた際によろめいたが、フレッドがすぐに支えてくれた。

「わたしの猫だ! わたしの猫だ! ミセス・ノリスに何が起こったというんだ?」

 ミセス・ノリスを見たとたん、フィルチは金切り声で叫んだ。

「おまえだな!」叫び声は続いた。「おまえだ! おまえがわたしの猫を殺したんだ! あの子を殺したのはおまえだ! 俺がおまえを殺してやる! 俺が……」

 フレッドが、ソフィアを強い力で引っ張り、人混みから離れようとした。人と逆流しようとする動きだったが、なんとか通り抜けることができる。

「気を付けろよ」

 フレッドが、誰にも聞かれないようにそっと呟いた。

 ソフィアは静かに頷いた。


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