immature love | ナノ


▼ ハロウィーン・パーティー5

 ソフィアがまだイジけている様子だったので、セドリックは困ったように頬を掻いた。うーんと軽く唸る。

「鬼婆とか?」セドリックが言った。

「頭巾を被るの? 可愛くないわ」

 ソフィアは(自分のアイデアの質はさておき)すぐに首を振った。以前ダイアゴン横丁で見かけたしわがれ声の鬼婆を思い出す。悩むソフィアの様子を見て、セドリックは肩を揺らして笑った。

「鬼婆は嘘だよ、流石にね」

「揶揄ったのね」

 ソフィアはセドリックをじろりと見た。

「無難に吸血鬼とかが可愛いんじゃないかな」

「吸血鬼?」

「ほら、呪いで八重歯を鋭くさせるだけでいいから。どんなにおめかししても、仮装と言い張れるだろ?」

 セドリックは肩をすくめた。

「僕じゃ女子の服はわからないから、レティに聞いた方がいいよ」

「凄くいいアイデアだわ」ソフィアは目を輝かせた。「私が吸血鬼の仮装をすることは皆には内緒よ」

「わかったよ」セドリックは笑いながら頷いた。

「ねえ、髪型はどれがいいと思う?」

 ソフィアは、「魔女の仮装――お洒落なマグルに仮装する」の後ろのおまけページを開いてセドリックに見せた。マグルで今流行りの髪型がまとめられている。シニヨンや、バレッタでのアレンジが載っている。

「おろしてても可愛いと思うよ」

 セドリックが、ソフィアの髪先を軽く指で触れた。

「ソフィアの髪って、凄く綺麗だから」

 セドリックの触り方があまりにも優しく、繊細な綿菓子に触れるようだったから、ソフィアは笑顔のまま固まった。顔に熱が集まる。セドリックも我に返ったように急に目を見開くと、まるでウィーズリー家の男子のようにみるみる耳まで赤く染めた。

「ごめん……急に触って」

 セドリックは湯気を出しそうなくらい赤かった。セドリックは、顔を片手で覆い、天を仰ぐようにしている。こんな風に途方に暮れるセドリックの姿は珍しい。

「なんならもっと触っていいのよ」

 ソフィアは、悪戯っぽく笑った。ソフィアは髪を梳き、ひと束掴んでセドリックの方へ向けた。やめてくれと言わんばかりに、両手をあげるセドリックにソフィアはけらけらと声を上げて笑った。セドリックもソフィアも、すっかりいつもの調子だった。

「そういえば、ソフィアが言ってたマグルの詩集無かったんだ。今度のレポートに使いたいから貸してくれる?」

 セドリックが首を傾げた。

「良いわよ」ソフィアは首を傾げた。「あれ? 今度のレポートってマグルの歴史よね?」

「詩の表現って歴史と一緒に変わってるんじゃないかと思って」

「私の持ってるやつは、最近出版されたものだから余り役に立たないと思うわ」ソフィアは首を振った。

「それならいつでもいいよ」セドリックが肩をすくめた。「でも折角だから読んでみたいな」

「分かった、後で貸すわね。飽きるくらい読み込んだからちょっと汚いかもしれないわよ」

「大丈夫だよ。絶対ソフィアの魔法史のノートと比べたらマシだから」

 セドリックが笑った。

「ちょっと! それが貸して貰う側の態度?」

 ソフィアは憤慨したように声を上げた。わざとセドリックを強く押し退けて、樽の中へと入っていく。後ろで、セドリックの笑い声が響いていた。


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