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▼ ハロウィーン・パーティー4

「絶命日? 自分の死んだ日を祝うなんて、どういうわけ?」ソフィアは聞いた。

「それは、僕も聞いたよ……」

 ロンはますます項垂れた。ロンはハリーがニックに絶命日パーティーへ招待されたことや、ハーマイオニーは乗り気なことを説明した。

 ソフィアも、骸骨舞踏団の余興を蹴ってまで絶命日パーティーに参加したいとはとてもではないが思えない。参加者はニックを筆頭に幽霊ばかりなのだろうから、とても「生きている」人間が食べられる料理は出てこなさそうだ。

「ダンブルドアが骸骨舞踏団を呼んだらしいわよ」

 恨めしそうにこちらを見るロンに、ソフィアは手元にあった雑誌を振って見せた。

「仮装パーティーもあるらしいし」

 ソフィアは自慢げにウインクまでしてみせた。ロンはそれを見て耳まで赤くした。気に障ったらしい。

「どのマグルの仮装が良いと思う?」

 ソフィアがパラパラと付箋のついたページをロンに見せた。親の世代がローブではなくマグルの服を着れば仮装だろうが、ソフィアだって休日はTシャツとデニムくらい流石に着ている。どうすれば仮装らしくなるのか分からなかった。

「こんなのただのマグルのファッション雑誌だよ」ロンが阿呆らしいと一蹴した。「いつも着てるじゃないか!」

「じゃあ、何を着ればいいっていうの」ソフィアが聞いた。

「僕、前にハロウィーンの時に村に行ったけど、みんな魔女の仮装とかしてたよ」

「そんな! 私が魔女の仮装しても普段の制服着るだけじゃない!」

「もう制服着てればいいよ。僕と違って絶命日パーティーなんかに参加しなくていいんだから。それだけで最高さ」

 ロンは鼻をほじりながら言った。心底どうでもいいと思っていることが、表情にありありと浮かんでいる。

「絶命日パーティーも悪くないわよ。今後の参考になるんじゃない?」ソフィアは意地悪く言った。

「ソフィアは、僕にパンプキンパイを食べずに飢え死にしろって言いたい訳だ」

「ロンの絶命日パーティーにはぜひ呼んでよね」

 目をぐるりと回したロンに、ソフィアは声を上げて笑った。仮装についての問題は何一つ解決していないが、ロンをからかえたこともあり、ソフィアは上機嫌で大広間を後にした。

 ソフィアが寮へ入ろうと樽を「ヘルガ・ハッフルパフ」のリズムで叩いていると、扉は突如内側から開かれた。樽から出て来たのはセドリックだった。セドリックも驚いたように目を丸めたが、すぐに外に出てソフィアが入れるように道を開けてくれた。

「おかえり、ソフィア。何してたんだい?」

「実は……ここだけの話だけど」ソフィアは小声で前置きした。「ロンにマグルの仮装はおかしいって言われちゃって」

 ソフィアのセリフにセドリックは一瞬固まり、次の瞬間には破顔した。珍しく声を上げて笑う姿に、ソフィアは馬鹿にされたと気付き頬を膨らませた。

「笑わないでよ」

「ごめんごめん……ソフィア、この前は良い仮装になりそうって自信ありげに言ってたもんだからさ」

 目尻の涙をぬぐい、柔らかく微笑んだセドリックにソフィアは頬を膨らませたままだ。

 ソフィアが「魔女の仮装――お洒落なマグルに仮装する」という本を図書館で見つけた時は、天啓だとさえ思い、素晴らしいハロウィーンの仮装になることを信じて疑っていなかった。まさか、ロンにマグルの仮装自体がおかしいと指摘されるとは思っていなかった。もし思っていたら借りていないだろう。

「反省してるなら、アイデア頂戴」


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