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▼ ハロウィーン・パーティー2

 夜になると、ソフィアの耳から出る煙も落ち着いてきた。

「病み上がりなんだからやめときなよ」

 ハッフルパフの談話室で、これでもかと上着やマフラー手袋をつけたソフィアを見て、セドリックが呆れたような声をあげた。優しいセドリックを呆れさせることは、ソフィアの特技だった。

「でも、新型のニンバスを見てみたいし」

 ソフィアは言い訳がましく言って、運動靴からブーツに履き替えた。雨は止んだが、恐らく地面はぬかるんでいるだろう。

「それなら今度行けばいいじゃないか」セドリックが言った。「言ってくれれば、僕だって付き合うよ」

「今日がいいのよ」ソフィアはキッパリと言った後、口をごにょごにょさせた。「ほら……あれよ」

「ウィーズリーか」セドリックが、今度こそ、深々とため息をついた。

 ソフィアは、いたずらっ子のように笑った。ソフィアは、フレッドとのことを揶揄われたり、周りから言われることが好きだった。まるでフレッドと両思いで、本当に付き合っていると錯覚できるからだ。

「行かないでよぅ」セドリックが、レクシーを抱っこして顔を隠すと、高い裏声を出した。

「ふふふ。レクシー良い子でお留守番してるのよ。それじゃあ、行ってくるわね」

 ソフィアは楽しそうに、両手を口に当てて笑う口元を隠した。手袋の毛糸がちくちくと口に当たる。ソフィアは、急いで身だしなみをチェックした。レクシーはセドリックの手から暴れて逃げ出すと、膝の上で丸くなった。

「変じゃない?」ソフィアは、セドリックの前でくるりと回った。

「かわいいよ」セドリックが諦めたように微笑んだ。

 ソフィアは談話室を出た。樽から、明々と松明に照らされた広い石の廊下に出る。食べ物の絵が並べられている方向へと向かう。

 沢山の絵の中で、巨大な果物皿の絵の前まで止まった。ソフィアは、周りに誰もいないことを確認してから、人差し指を伸ばして大きな緑色の梨をくすぐった。梨はクスクス笑いながら身を捩り、急に大きな緑色のドアの取っ手に変わった。ソフィアは取っ手をつかみ、ドアを開けた。

 大広間と同じくらい広く、天井の高い部屋だ。石壁の前にずらりと鍋やフライパンが山積みになっている。部屋の奥には大きなレンガの暖炉があった。

 紅茶やクッキーを振る舞おうとする屋敷しもべ妖精たちをかわし、ソフィアは尋ねた。

「もしよければ、熱々の紅茶を入れた水筒を貰えないかしら?」

 しもべ妖精たちは、紅茶だけでなく、夜食用のスナックまで用意してくれた。カゴ一つに纏まっている。しもべ妖精たちはひっきりなしにお辞儀をしたり、膝を折って挨拶した。ソフィアは片手に籠を持ったまま、厨房から玄関ホールへ急足で大理石の階段を登った。

「遠足じゃないんだぞ」ジョージが、ソフィアを見て呆れたような声を上げた。

「歩く寝袋みたいだぜ」フレッドが言った。「ありゃあ、野宿する気だな」

「言われた通り、着込んできたのよ」ソフィアはぶすくれた。

 双子に挟まれて、ソフィアは校庭に出た。十月でも夜はとても冷え込む。ソフィアは、沢山着込んできて良かったとしみじみ思った。

「寒すぎ」フレッドが体を縮こませて言った。

「人に言うだけで、防寒してこないからよ」ソフィアは得意げに片手を突き出した。「ほら、私みたいに手袋すれば良かったのに」

 ソフィアは突き出した手を口に持っていき、思いきり笑った。フレッドがムッとしたように口を曲げた。

「よし、これで暖かくなったぞ」

 フレッドが得意げに笑ったが、一方でソフィアは黙り込んだ。フレッドが、ソフィアの手を捕まえて、そのまま自分のポケットに入れたからだ。

「勘弁してくれよ」ジョージが言った。「マジで」


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