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▼ 穢れた血7

 ソフィアも、マグル差別がこの魔法社会の奥底で蔓延っていることを重々承知している。この差別があるからこそ、ソフィアはマッキノンではなくアスター姓を名乗っているのだ。

 穢れた血

 ハーマイオニーが、その言葉を知らないのも当然だろうとソフィアは思った。グリフィンドールには、そんな言葉を使うような生徒は恐らくいない。

 ソフィアは自分だったらなんで励まされたら元気が出るか考えた。思い浮かんだのは、いつも明るくソフィアを元気付けてくれるフレッドだった。ソフィアは、フレッドを思い浮かべるだけで、差別で暗くなった心に日差しが差し込んだような気持ちになる。

「大事なのは、あなたが素敵な友達をホグワーツで得たってことじゃない?」ソフィアはにっこりと笑った。

「え?」ハーマイオニーは目を丸くした。

 ハーマイオニーは、慰めの言葉やマルフォイに対する罵声を聞くことになるだろうと思っていたのだろう。戸惑っている様子だった。いつものソフィアであれば、マルフォイに怒鳴り散らすためにスリザリンへ乗り込むところだった。

「勿論、マルフォイって最低よ」ソフィアは鼻を鳴らした。「でもね、同じ純血のロンが真っ先に怒って杖をあげたのよ」

 不思議そうなハーマイオニーにソフィアは続ける。

「ロンは純血で、生まれた時から魔法族よ。それでもマグル差別の考えに染まってない」ソフィアは声に力を込めた。「しかも、誰よりも怒ったのよ!」

 ソフィアの言いたいことが、ハーマイオニーにはぼんやりと通じたらしい。口角を少し上げた。

「うん、そうね。私、友達に恵まれたみたい」

 声を震わせ、噛みしめるように呟きながら、ハーマイオニーはにっこりと微笑んだ。ソフィアも笑った。変な差別に頭を悩ませるより、素敵な友達と笑いながら幸せな時間を過ごしてほしいとソフィアは思った。

 ソフィア自身も、ウィーズリー家やアスター家に救われてきた。マグルに対する差別的な考えはずっと一部で蔓延っている。差別していなくても、無意識にマグル生まれを下に見ている人もいる。

 ソフィアはこれまで魔法界で生きてきて、そんな人達が掃いて捨てるほどこの世界にいることを知っている。ソフィアは、くだらない連中を相手にするより、信用できる素敵な友達を作った方が良いと思っていた。

「あれ、ソフィアじゃないか」

 少し低い声がし、ソフィアは驚きで肩を竦ませた。聞き慣れた、フレッドの声だ。

「フレッド! どうしたの?」

 ソフィアは目を丸くしながら、入り口から現れたフレッドに駆け寄る。
「かわいこちゃんが僕に教えてくれたんだ。君たちが此処にいるってね」フレッドが悪戯っぽく笑った。「もうすぐ就寝だぞ。早く解散しとけよ」

「あなたが就寝時間を気にするなんてね」ソフィアは小声で付け足した。「……かわい子ちゃんって誰よ」

 ソフィアはフレッドを軽く睨むと、ハーマイオニーにおやすみと笑いかけた。入り口でソフィアは一度だけ振り返って、少し焦ったようなフレッドを一瞥する。

「ニンバスなんて折ればただの棒なんだから、頑張りなさいよビーター」ソフィアが鼻を鳴らした。

「マーリンの髭!  ソフィアはたまにママよりおっかないな」フレッドは嬉しそうに言った。

 おやすみと言いながらソフィアもフレッドも軽く手を挙げる。就寝時間までほんの少しだ。ソフィアは急ぎ足で地下の暖かいアナグマの巣に戻った。

 駆け込むように戻ってきたソフィアを、レティとマルタが「早かったね」とにやにや笑った。ソフィアはただ悪戯っぽくウインクした。何か聞かれる前にと、ソフィアは慌ててベッドに潜り込んだ。瞼を閉じる。

 マルタは、マグル生まれを庇わなかったからエイドリアンと別れたと言っていた。もしかすると「穢れた血」の一件を知っているのかもしれないと、ソフィアは思った。もし、生まれについてエイドリアンがマルタの味方をしなかったとしたら、ショックだったに違いない。ソフィアは敢えて、そっとしておくことにした。

 フレッドが言っていた、かわい子ちゃんは誰だろう……気にすることじゃないかしら……ソフィアの思考がだんだんと眠りの海に落ちていった。


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