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▼ 穢れた血6

 ソフィアは頬杖をつきながらニヤニヤと笑っているレティに答えず、ベーっと舌だけ出した。図星すぎて、少しばかり居心地が悪い。ソフィアは寮を飛び出した。

「合言葉は?」

 グリフィンドールの寮に来たまでは良かったが、ソフィアは早々に来たことを後悔した。なにせ、合言葉を知らない。ソフィアはグリフィンドール生じゃないのだから、当たり前だ。階段を登って来た甲斐がないと、ソフィアはため息を吐いた。

 婦人の絵は内側から開く様子もない。グリフィンドール生の誰かが出てこなければ、フレッド達を呼んでと頼めないことにもソフィアは気づいた。

「あら、ソフィア?」ハーマイオニーの声がした。

「ハーマイオニー、助かったわ」笑顔を一転、ソフィアは嫌な顔をした。「どうしたの? その本、趣味悪いわよ」

 階段の下方には、ハーマイオニーがいた。ハーマイオニーは本を大量に抱えている。ハーマイオニーが本の虫であることはいつものことだが、持っている本のチョイスが良いとはソフィアは思えなかった。

 ハーマイオニーが持っていた本のタイトルは、上から順に「尊い魔法族の血と下等なマグル」「マグルは魔法族を侵略する?」「穢れた血と綺麗な血」「純血を保つには――半純血の恐ろしさ」「純血一族一覧」……と趣味の悪さを煮詰めたようなものばかりだ。

「えっと、これは何というか」

 珍しく言葉に詰まるハーマイオニーに、ソフィアはますます首を傾げた。今のハーマイオニーは、どこか困ったような、助けを求める迷子のように見えた。ソフィアは、ハーマイオニーから本を半分ほど奪い取った。

「とっておきの秘密の部屋があるの。そこでなら時間が過ぎてもバレないから……お喋りしましょ」ソフィアはにっこりと笑いかけた。

「そんな! 駄目よ、ソフィア――」ハーマイオニーは悲鳴をあげた。

「ついてこないなら、この本たちを隠しちゃうかも。図書館の本を延滞するとマダムピンスが怖いわよ」

 ソフィアがウィンクして言えば、ハーマイオニーは観念したように項垂れた。ハーマイオニーは静かにソフィアの後をついてくる。ソフィアは、廊下をうろついている姿は見られたくないため、少し早歩きで秘密の部屋へ急いだ。

 五階のタペストリーの裏、隙間に手を入れる。ごつごつとした出っ張りを押せば、その隙間は見る見る間に大きくなり、人一人通れるくらいになった。ハーマイオニーが後ろで唖然としている。

「やだ、こんな場所があったなんて知らなかったわ」

「だって秘密にしてるんだもの。フレッドとジョージが教えてくれたの」ソフィアは肩をすくめた。「二人がいじけちゃうから、秘密にしてね?」

「ええ」ハーマイオニーは戸惑いながらも頷いた。

 戸惑うハーマイオニーを連れソフィアは部屋に入る。

 少し埃っぽかったので、ソフィアはすぐに杖を取り出したスコージファイをかけた。古びたソファにゆったりと座る。ハーマイオニーは一瞬迷う素振りを見せたが、クッションを抱えて座った。借りてきた猫のようだとソフィアは思った。

「ロンがマルフォイを呪おうとしたって聞いたけど……もしかして、それと関係あるの?」

 ソフィアが指差すそれら――マグルを馬鹿にしたくだらない本の数々――を見て、ハーマイオニーは観念したように溜息をついて話し始めた。

 マルフォイがハーマイオニーに「穢れた血」と吐き捨て、ロンはナメクジの呪いなんていう高度な呪いをスペロテープでなんとか繋がってる杖で放とうとしたらしい。

 ソフィアは、ロンを誇らしいとさえ思った。マルフォイはなんて腐ったやつだろうか。ソフィアは、先日の書店で会ったマルフォイ氏を思い出した。


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