▼ 穢れた血5
土曜日の夜、ソフィアがベッドで腰掛けてマグルの詩集を読んでいた。
「そういえば、今日ウィーズリーを見たわよ。スリザリンと揉めてたわ」レティが思い出したように話し出した。
驚いたようにソフィアは顔を上げたが、レティは興味なさそうに足の爪に丁寧に塗られたカナリアイエローのマニキュアにふーふーと息を吹きかけている。
「フレッドのこと?」ソフィアが聞いた。
「違うわよ、ポッターの腰巾着の子」レティが失礼な言い方をした。「相変わらずフレッドフレッドうるさいわね」
「腰巾着なんて失礼ね、ロンって名前があるのよ」
ソフィアは文句を言った。雑誌を読んでいたマルタは興味を引かれたように顔を上げた。
「そういえば、グリフィンドールとスリザリンが揉めたって聞いたよお」マルタが言った。
「あの性格の悪い彼氏に聞いたの?」レティが意地悪く言った。
「うーん、振った!」マルタが朗らかに言った。
ソフィアは飲もうとしていた水を噴き出した。
「良い雰囲気だったじゃない」ソフィアが驚いたように言った。
「マルフォイとつるんでるんだもん。私のためにマグル生まれを庇ってくれる人じゃないと嫌」
マルタがため息をついて、やれやれと首を振った。ソフィアが首を傾げているので、レティがマニキュアを置いて、本格的に話す体勢になった。
「クィディッチの練習場を巡って揉めたらしいわ。グリフィンドールのキャプテンが予約していたピッチを、スリザリンがスネイプと結託して横取りしたんですって」レティは鼻息荒くした。「スネイプの贔屓ってどうにかならないの? ハッフルパフの練習でやられたら良い迷惑だわ」
「ロンはどう関わってくるの?」ソフィアが聞いた。
「キレてマルフォイにかけた呪いが、自分に逆噴射したみたいよ」レティが笑った。
「ピッチ取られて、フレッドがキレるのは分かるんだけど、ロンがねえ……」
ソフィアが思案するように呟いた。ロンはクィディッチの選手でもないのに、意外だった。
「マルフォイがニンバスニ〇〇一をチーム全員分寄付したらしいから、それで金持ち自慢されたとか?」マルタが言った。
「ほんと、去年のハリーの箒といい、皆ひょいひょいあげちゃって」ソフィアは呆れたようにため息を吐いた。。新しいシーカーにとハリーにニンバスが与えられ、特別扱いされたことは今でも少しばかり憎たらしい。だって、ハッフルパフだってあの時は期待のシーカーが誕生していたのだから。
「まあ、仕方ないわ。マルフォイは魔法界でも屈指のお金持ちだもの」レティは締めくくった。
「シャフィクもお金持ちなんだから、ニンバス買ってあげればいいんだよ!」マルタが悪戯に笑いながら言った。
「何で親の金を他人に使わなきゃいけないのよ」レティが溜息をついた。
ニンバスを見せびらかされた時のフレッドとジョージの顔が眼に浮かぶ。彼らは常々クリーンスイープ五号を買い替えたいと嘆いていたからだ。クィディッチの競技用箒は、到底彼らのお小遣いで買い替えられるような安い代物ではない。
双子が気にかかり、ソフィアはベッドから立ち上がった。膝の上に乗せていた詩集はそのままベッドの上に落下する。厚手のガウンを、パジャマの上から羽織った。
「もうすぐ就寝時間よ、どこ行くのよ」レティが言った。
「ちょっと出てくるわ」ソフィアが何気なさを装って言った。
「どこ行くか知ってるよお。双子のところでしょ」マルタがにやついた。
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