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▼ 穢れた血4

「……ところが、ミス・ソフィア・アスターだけは、私の密かな大望を知ってましたね。この世界から悪を追い払い、ロックハート・ブランドの整髪剤を売り出すことだとね。悪を追い払うまでは書けていませんでしたが――よくできました! 他の回答はほとんど外れていますがね」

 ソフィアは空いた口が塞がらなかった。ギリアンが隣で笑いを堪えて震えている。ロックハートは、正解のご褒美としてハッフルパフに五点くれたが、ソフィアはこんなに貰って嬉しくない得点は初めてだと素直に驚いた。

 初日の授業を半分終え、昼食を食べた五人は中庭に出た。曇り空だ。

「みんな、並べよ! ハリー・ポッターがサイン入り写真を配るそうだ!」

 マルフォイの叫び声が響き渡り、ソフィアは何事かと辺りを見渡した。

「僕はそんなことしていないぞ。マルフォイ、黙れ!」

 ハリーは拳を握りしめながら言っている姿が見えた。

「君、焼き餅妬いてるんだ」

 薄茶色の髪をした小さな少年が、勇気のあることにマルフォイに向かって言った。昨日グリフィンドールに組み分けされていたコリン・クリービーだ。確かに勇気があるとソフィアは納得したように頷いた。コリンは、ソフィアがマグル学の授業で見た「カメラ」とそっくりの装置を持っていた。

「妬いてる?」マルフォイは侮辱されたような顔をした。「何を? 僕は、ありがたいことに、額の真ん中に醜い傷なんか必要ないね。頭をかち割られることで特別な人間になるなんて、僕はそう思わないのでね」

 あまりにも長々と話しているので、ソフィアはマルフォイが図星をつかれたのではないかと思った。レティが呆れたように笑っている。

 マルフォイは、甲高い突き刺すような声色で「今度ちょっとでも規則を破ってごらん――」と言っているのが聞こえた。近くにいたスリザリンの五年生の一団が声をあげて笑っていて、その中にはエイドリアンもいた。隣でマルタがきっと目尻を釣り上げた。
「いったい何事かな? いったいどうしたかな?」

 その時、トルコ色のローブを着たギルデロイ・ロックハートが大股で歩いてくると、ハリーたちの集団に合流した。今やソフィアだけでなく、中庭にいる全員が興味津々で成り行きを見守っている。

「サイン入りの写真を配っているのは誰かな?」ロックハートはハリーの肩にさっと腕を回し、陽気な大声を響かせた。「聞くまでもなかった! ハリー、また逢ったね!」

 ロックハートはキラリと輝くように白い歯を見せびらかして笑っている。

「さあ、撮りたまえ。クリービー君」ロックハートがコリンににっこり微笑んだ。「二人一緒のツーショットだ。最高だと言えるね。しかも、君のために二人でサインしよう」

 コリンは慌てた様子でカメラを持ち直していた。ちょうど午後の授業の始まりを告げるベルが鳴った。

「さあ、行きたまえ。みんな急いで」

 ロックハートは、中庭にいる生徒を城へと追い立てると、ハリーを抱えたまま城へと歩いて行った。

「……ソフィアも貰ってきたら?」

 セドリックが笑いを堪えた様子でソフィアに言った。

「ハリー単体のサイン入り写真なら欲しかったかもね」ソフィアは疲れたように言った。


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