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▼ 穢れた血2

 翌朝、大広間での朝食では、牛乳入りオートミールの深皿、ニシンの燻製の皿、山のようなトースト、ベーコンエッグの皿が並べられていた。ソフィアは、フレークにたっぷりと砂糖をかけたものを食べている。

 グリフィンドールのテーブルを見ると、ロンとハリーは普段通り席に着いていた。本当に退学にならずに済んだらしい。ソフィアは安心から、もう一口フレークを食べた。ジャリジャリと口の中に残る砂糖が好きだった。

 大広間に生徒のほとんどが集まると、百羽を超えるふくろうが押し寄せ、手紙やら小包やらを落とした。

 突然爆発が起きた。ソフィアは口からフレークを牛乳と共に吐き出した。大広間一杯に吼える声が響き渡り、振動で天井から埃がバラバラ落ちてきた。ウィーズリーおばさんの声だと、ソフィアはすぐにピンときた。

「車を盗み出すなんて、退校処分になってもあたりまえです。首を洗って待ってらっしゃい。承知しませんからね。車がなくなっているのを見て、わたしとお父さまがどんな思いだったか、おまえはちょっとでも考えたんですか……」

 ウィーズリー夫人の怒鳴り声が、本物の百倍に拡大されて大広間に響き渡った。声は石の壁に反響して、鼓膜が裂けそうだった。

 ハッフルパフのテーブルにいた生徒たちはみんな、キョロキョロと辺りを見回して、吠えメールを受け取った人が誰かを探していた。吠え声は今も続いている。ソフィアがグリフィンドールのテーブルを見ると、ロンが顔を真っ赤にして小さくなっていた。

「……まったく愛想が尽きました。お父さまは役所で尋問を受けたのですよ。みんなおまえのせいです。今度ちょっとでも規則を破ってごらん。わたしたちがおまえをすぐ家に引っ張って帰ります」

 グリフィンドールのテーブルで叫んでいた赤い封筒は、炎となって燃え上がり、チリチリと灰になった。ハッフルパフの隣で、スリザリンのテーブルが盛り上がった。

「あのウィーズリーの顔見たか? あんな家の恥さらしみたいな真似、もし僕だったら天文台の上から飛び降りるね」マルフォイが言った。

「ドラコったら!」パグみたいな顔の女子が、大袈裟に肩を震わせてくすくすと笑っている。

 スリザリン生はなぜこうも意地が悪いのだろうとソフィアは憤慨した。しかし、スプラウト先生が時間割を配り始めたので、ソフィアはすぐに思考を中断した。

「最悪だ、一限目から闇の魔術に対する防衛術、二限目は魔法薬だ」

 近くの席で、ギリアンがげんなりした様子で呟いた。ソフィアも、胃が痛くなった。スネイプは、ソフィアが最も苦手とする先生で、これまでスネイプだけでソフィアは四十点も減点されている。

「セドリックの授業は相変わらず変態的ね」

 レティがセドリックの時間割を覗き込んで言った。セドリックは、苦笑いを浮かべて頬をかいている。

 ソフィアたちは席を立って、教室へと向かうことにした。暗い廊下を歩いていると、猫の鳴き声がした。前方に、赤い目の猫がいる。ミセス・ノリスだ。

 ホグワーツの生徒なら、誰もがミセス・ノリスを蹴飛ばしたいと一度は思う。もし思ったことがない人がいたとしたら、入学したばかりに他ならない。

「嫌だわ、こっちに来たってフィルチに言いつけるものは何もないわよ」レティがシッシッと手を振る。「猫ってだけで嫌いなのに。フィルチの飼い猫って、最悪よね」

「ペットに犬も許可すれば良いのにねえ」マルタが頷いた。

「確かに、私も犬が好きだわ。大きくてふわふわしてて、可愛いもの」ソフィアも同意する。

「今にグリムもふわふわしてて可愛いわとか言い出すぜ」

 ギリアンが目を回した。ソフィアは目を尖らせた。

「ちょっと何? 私ってそんなに間抜けじゃないわ」

「君がグリムを見たら、グリムと気付く前に可愛いと言うさ、一ガリオン掛けてもいい」ギリアンが自信満々に言い切った。


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