immature love | ナノ


▼ 夏休みの終わり7

「ソフィアにだけ見えるなんて、ロマンチックじゃない?」マルタがにこにこと笑って言った。

「見た目がユニコーンみたいならね」

 ソフィアは肩をすくめた。この生き物がいかに不気味なのか、伝える術がない。少なくとも、ソフィアはロマンチックには思えなかった。

 今日はまだ一度もフレッドを見かけていなかったと、ソフィアは思い出したように辺りを探した。ソフィアがキョロキョロと周りを見渡していると、人ごみの中で燃えるような赤髪が見えた。ソフィアはレティ達に別れを告げ、双子の方へ近づいて行く。

「フレッド、ジョージ! 久しぶりね」

「やあ、ソフィア」フレッドが手を振った。

「ハッフルパフの連中はどうした?」ジョージが聞いた。

 ジョージはリー・ジョーダンとの会話をやめ、ソフィアへ顔を向けた。リーが気を利かせて先に行こうとするので、ソフィアは止めなくてはいけなかった。

「レティ達は先に行って馬車を取ってくれてるわ」

「そうかい、イジメられてるのかと思ったぜ」

 フレッドがにやりと笑うので、ソフィアは頬を膨らませてフレッドの腕を叩いた。

「ロンとハリーを見てないか? 遅刻しそうだったから出発の時バタバタしてて、ホームでも顔を合わせてないんだ」ジョージが、思い出したように声を上げた。

「見かけてないわ」

 ソフィアは考えたのち、首を振った。ソフィアには、自分がハリーを見かけたら絶対に気付くだろうという謎の自信があった。

「もしかして乗り遅れたのかもな」フレッドが面白そうに笑った。

「その冗談つまらないわよ」

 ソフィアがピシャリと言った。ソフィアは目を眇めてフレッドを見たが、フレッドは肩を竦めるだけだ。

「だって、そうだろ? 誰も列車で見かけてないんだ」フレッドは付け足した。「どうせマクゴナガル辺りが姿現しで迎えに行くから大丈夫だろ」

「でも、ホグワーツじゃ使えないわ」ソフィアは眉を下げた。

「そんなのホグズミートまで行けば良いだけだろ」ジョージが呆れたようにため息を吐いた。

「確かにそうね! それに、二人が乗り遅れたと決まったわけでもないし」ソフィアは明るい声を出した。

「まっ、ハーマイオニーも探してたから遅刻が一番ありえるな」

 ソフィアの願いにも似た言葉をジョージが一刀両断した。ハーマイオニーまで探していたとなると、遅刻の線が濃厚だ。ホグワーツの始業式に遅れてきた生徒は見たことがなかったので、ソフィアはハリーとロンがどのような方法でホグワーツに来るのか気になった。煙突飛行ネットワークか付き添い姿くらましだろう、箒は流石に難しいはずだ。

「もしスネイプの付き添いで現れたら、俺はあいつらを心から称賛するね」フレッドが言った。

「スネイプの腕を掴むくらいなら、ドラゴンの糞を掴む方がマシだもんな?」ジョージがニヤリと笑った。

「でも、スネイプ先生だってそこまで悪い人じゃないわ」

ソフィアは自信なさそうに付け足した。「スリザリン生にとっては、少なくともそうでしょう?」

 フレッドとジョージは顔を見合わせた。意地の悪いニターッとした笑みを浮かべたので、ソフィアは悪い予感に悪寒がした。その場を離れようとしたが、双子が遮るようにソフィアの左右に立った。

「アスターくん、いつまでメソメソと嘘くさい泣き真似をするつもりですかな?」

「その態とらしい演技……ハッフルパフから二十点減点」

 不機嫌に顔を歪めたソフィアは、じゃあねと挨拶すると足早にその場を離れた。遠ざかるソフィアに、双子は面白そうに笑いながら手を振った。


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