▼ 純血6
人垣がみんな揃って拍手した。ハーマイオニーがうっとりした様子で拍手し、ロックハートを見つめている。目がハートになっているとソフィアは思った。
「君もあれがカッコいいって言わないよな」
フレッドが眉を顰めてソフィアに耳打ちした。ソフィアは実物のロックハートはとてもかっこいいと思っていたので、肩をすくめるだけにした。
「まもなく彼は、私の本『私はマジックだ』ばかりでなく、もっともっとよいものをもらえるでしょう。彼もそのクラスメートも、実は、『私はマジックだ』の実物を手にすることになるのです。みなさん、ここに、大いなる喜びと、誇りを持って発表いたします。この九月から、私はホグワーツ魔法魔術学校にて、『闇の魔術に対する防衛術』の担当教授職をお引き受けすることになりました!」
人垣がワーッと沸き、拍手した。ソフィアは、何故か急にロックハートが憎たらしく思えてきた。全然格好良くない。ハリーはギルデロイ・ロックハートの全著書をプレゼントされ、重みでよろけながら、部屋の隅へとふらふら歩いて行った。
「彼らは一体何をしているんだ」
ウィーズリーおじさんが言った。
部屋の隅で、ジニーが沢山の本が入った鍋を抱えて真っ赤になっていた。ロンも真っ赤になって、マルフォイにかかって行こうとしたが、ハリーとハーマイオニーが、ロンの上着の背中をしっかりつかまえていた。
「ロン!」
ウィーズリーおじさんが慌てて進み始めた。ハリーたちの元へ行こうと、人混みと格闘している。
「何してるんだ? ここはひどいもんだ。早く外に出よう」おじさんがロンを捕まえた。
「これは、これは、これは――アーサー・ウィーズリー」
マルフォイ氏の冷たい声が響いた。マルフォイ氏は息子ドラコとそっくりだった。
「おや、こちらはアスター家の方々ではないか。揃いも揃って、仲が良さそうで……類は友を呼ぶと言いますからねぇ」
マルフォイ氏が両親をバカにしていることは、状況をつかめていないソフィアでもよくわかった。
「お役所はお忙しいらしいですな。あれだけ何回も抜き打ち調査を……残業代は当然払ってもらっているのでしょうな?」
マルフォイ氏はジニーの大鍋に手を突っ込み、豪華なロックハートの本の中から、使い古しのすり切れた本を一冊引っ張り出した。「変身術入門」だ。
「どうもそうではないらしい。なんと、役所が満足に給料も支払わないのでは、わざわざ魔法使いの面汚しになる甲斐がないですねぇ?」
ウィーズリー氏は、ロンやジニーよりももっと深々と真っ赤になった。
「ルシウス、魔法使いの面汚しがどう言う意味か、詳しく伺いたいね」ドウェインが薄ら笑いを浮かべて言った。「そういえば、君の家には、素晴らしい品々があると聞いているよ。僕らもぜひお邪魔させて貰いたいね」
マルフォイ氏の顔が少し引き攣った。マルフォイ氏の薄灰色の目が、心配そうになりゆきを見ているグレンジャー夫妻のほうに移った。
「こんな連中と付き合っているようでは……君たち家族は落ちるところまで落ちたと思っていたんですがねぇ」
ジニーのお鍋が宙を飛び、どさっと金属の落ちる音がした。ウィーズリーおじさんがマルフォイ氏に飛びかかり、その背中を本棚に叩きつけたのだ。分厚い呪文の本が数十冊、みんなの頭にどさどさと落ちた。
近くで、ロックハートがそれはもう興奮したように三人の大人の魔法使いの喧嘩を見ていた。近くのカメラマンに、記事にしてくれないかと頼んでいる。
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