▼ 純血4
フレッドとソフィアは、フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラーへと向かった。カラフルなパラソルが並んでいる。そのうちの一つの下に、席を陣取った。チョコレートチップと苺の大きなアイスをペロペロと舐めながら、夏休みにあったことをお互いに話した。
「パーシーったらずっと部屋に篭ってるんだ。食事の時にしか姿を見せないよ」フレッドが言った。
「予習でもしてるのかしら?」ソフィアはアイスを食べるのを中断して、不思議そうに首を傾げた。
「ありえるな。試験結果が届いた時「十二ふくろう」だったのにニコリともしなかったんだぜ」
「ビルを超えたいとか?」
「それならまずはあのダサいPバッジを外さなくちゃ」
フレッドにつられて、ソフィアも笑った。ビルが学校以外であのバッジを着けていることはなかったが、パーシーときたらタンクトップの上でさえ着ている。今日だって珍しく気合の入った服装だったのに、胸元に輝くPバッジが全てを台無しにしていた。
「さりげなく着けるからあのバッジはカッコいいのにね?」
「そんなこと言うなよ。あのバッジつけるぐらいならエロールを頭に載せてる方がマシさ」
フレッドは我が家に監督生がこれ以上出たらこれほど不名誉なことはないと言いたげだった。
「もし監督生になったら私、フリントを減点してやりたいわ」
「確かに、それなら監督生も悪くないな」
天才だとフレッドが頭をぐしゃぐしゃに撫でてくるので、ソフィアははにかんだ。撫でられるのが嬉しいやら、せっかくセットしてきた髪が崩れるやらで複雑な心境だった。
こそこそと、小さくもめている声が耳に入ってきた。
「ほっとけよ、あいつらに近寄るのはやめといた方がいい」ロンが言った。
「あら、でもアイスを買うくらい別に邪魔にはならないはずよ」
ハーマイオニーはどうしてもアイスを食べたいらしい。きっぱりと言い切った。
「僕、知らなかったよ。ソフィアとフレッドが付き合ってたなんて」ハリーが驚いたように言った。
「まだ付き合ってないらしいけど、フレッドが時間の問題だって言ってた」ロンのうんざりとしたようなため息が聞こえた。
一瞬で、フレッドの顔が沸騰したように赤くなった。フレッドは穴があったら入りたいと言いたげに、片手で顔を覆った。ソフィアは、フレッドの顔を直視できなかった。顔に熱が集まっていることは確かだったので、恐らくフレッドと同じくらい顔が真っ赤になっているだろう。
「もう食べ終わったし……店出ましょうよ、雑貨屋さんに行きたいわ」
「ああ、そうだな」
三人の小さい人影は、ソフィアとフレッドの会話が聞こえていたようで「聞かれたかな?」とひそひそと囁き合っていたが、その会話含めて丸聞こえだとソフィアは言ってやりたかった。
あいにく雑貨屋にはパーシーが「権力を手にした監督生たち」という恐ろしくつまらなそうな本を、恐ろしいほど没頭して読んでいた。『ホグワーツの監督生たちと卒業後の出世の研究』と裏表紙に書かれていた。ソフィアとフレッドが見ていることに気づいたのか、パーシーがこちらを睨んだ。
「あっちへ行け」パーシーが噛みつくように言った。
フレッドとソフィアは路地を歩き回って、ウィンドー・ショッピングをした。
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