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▼ 真夜中のドライブ3

 ソフィアは計画に目を輝かせた。ウィーズリーおじさんの愛車であるトルコ石色の旧式なフォード・アングリアが、実は違法に改造された空飛ぶ車であることをソフィアは知っている。ソフィアは突如この計画が素晴らしいもので、うまくいくように思えてきた。

 計画を実行するに向けて、怪しまれないようにする必要があった。ソフィアたちは、夜までは丘の上にある小さな牧場に行って、キャッチボールをする事にした。

 此処は昔からソフィアたちにとって、とっておきの遊び場だ。小さな草原は、木立で囲まれているため、下の村からは見えないのだ。フレッド、ジョージ、ロンがボールを使って空中でキャッチボールしているのを、ソフィアは地面に座って眺める。彼らは空中で何か話しているようだがそれは地面にいるソフィアには聞こえてこなかった。

 仲間はずれにされたような気がしないでもないが、変に気を使って仲間に入れようと箒にでも乗らされた方が迷惑だ。なにせ、ソフィアは墜落する名人だった。

 ロンの中古の箒「流れ星」は、そばを飛んでいる蝶にさえ追い抜かれていた。

「ソフィア! 今度の水曜日は空いてらっしゃるのかな?」

 フレッドが地面の方へふわりと舞い降りる。わざとらしいくらい勿体ぶった聞き方だった。ソフィアが首をかしげた。

「ダイアゴン横丁へ行くのさ」フレッドが肩をすくめた。

「今年はママとパパと一緒に行くのよ、だから無理だわ」ソフィアが残念そうに言った。

「なるほどな、そりゃ仕方ない」

 フレッドは少しいじけたように口をすぼめた。慌てたようにソフィアは首を振る。

「で、でも、ちょっとなら会えるだろうから……」

「約束だぜ」

 フレッドはニヤリと笑ったのも束の間、頭をガシガシと掻きながら唸り声を上げる。フレッドの不審な行動をソフィアが驚いて見つめていると、意を決したようにこちらに顔を向けた。

「ジョージも誘うか?」

 暗にこの約束をデートにするのか聞かれているとソフィアは気付いて、ウィーズリー家の赤毛に負けないくらい顔を真っ赤にした。

「二人だけの方が行き先で喧嘩しなくて済むかも」

 フレッドは耳元をポッと赤らめた。フレッドは居心地悪そうにもう一度頭をぐしゃぐしゃと混ぜるようにかくと「じゃあ、ジョージには内緒な」と呟いて、箒に再びまたがった。

 あっという間に小さくなる姿を見上げながら、ソフィアは身体中の血液が沸騰するような気がした。むず痒くて居心地が悪い。

 今日ばかりは、箒に乗れず地面で見学していることに感謝した日はない。こんなに真っ赤になった顔、とてもではないが周りに見せたくないとソフィアは堪らず顔を手で覆った。喜びで叫び出したい気分だった。

 夕暮れになり、ソフィアたちは隠れ穴へ帰った。ウィーズリーおばさんは、ミートローフやチキンスープと豪華な料理を作って待っていた。

 パーシーは、夕食の時になってはじめて姿を見せた。手編みのタンクトップに、監督生バッジが輝いている。パーシーは食事も早々に済ませると、すぐに部屋に戻ってしまった。

「パーシーのやつ、この夏休みの行動がどうも変だ」ジョージが眉をひそめた。「山ほど手紙を出してる。それに、部屋に閉じこもってる時間も半端じゃない。……考えてもみろよ、監督生の金バッジを磨くったって、限度があるだろ……」

「僕にもヘルメス貸してくれなかったんだぜ。ソフィアの家なんて、十分あれば往復できるのにさ」フレッドが不満げに言った。

「ヘルメス?」ソフィアは知らない名前に首を傾げた。

「パーシーが監督生になった時、パパとママが、パーシーに買ってやったふくろうさ」フレッドが答えた。

「監督生になったら買ってあげますよ」ウィーズリーおばさんがピシャリと言った。


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