immature love | ナノ


▼ 混乱薬3

 マダム・ポンフリーに渡された紙袋を丁寧に抱えて、ソフィアは医務室を出た。クィレルの部屋に行くと、明かりが漏れていて室内にいるようだった。両手は火傷したばかりなので、ソフィアはノックせずに声だけかけた。すぐに扉が開けられる。

「い、急ぎでは、な、なかったのに、む、無理をさせてしまいましたかね」

 クィレルは申し訳なさそうに言った。心配そうに、今やミイラのように包帯で肌を覆い尽くしたソフィアを見ている。ソフィアは思い切り首を横に振った。

「違います! 早く先生にお礼を言いたくて、だから、えっと」

 ソフィアが言葉選びに困っていると、クィレルは首を振った。

「お、お礼を言うのは、わ、私の方です。て、手を離せなかったので、お使いをしてくれて、た、助かりました。ハ、ハッフルパフに十点与えましょう」

 事態が飲み込めず呆然とするソフィアに、クィレルは悪戯っぽく笑って、早く医務室に戻りなさいとだけ言って部屋に戻ってしまった。

 ソフィアが医務室に戻ると、マダム・ポンフリーはソフィアをベッドに押し込むと、カーテンを閉じきった。ソフィアは横になり、瞼を閉じた。クィレルが優しくしてくれたことが、ソフィアは本当に嬉しかった。クィレルを喜ばせるには、どうすればいいのだろう。

 紅茶を取り寄せてプレゼントしようかしら……それとも、ケーキとか……やっぱり闇の魔術に対する防衛術とマグル学で良い成績も取らないと……

 ソフィアが次に目を覚ますと、隣に置かれたテーブルには山ほどお菓子やフルーツが盛られていた。マダム・ポンフリー曰く、安静にしなきゃいけないからと追い返そうとしたら、これだけでもとソフィアに贈られてきたらしい。

 友人に恵まれたことをしみじみ感謝しながら、ソフィアは唯一食べ物ではないノートを手に取った。隅に、以前ソフィアが授業中に描いたニフラーの落書きがされている。

 ノートには、ソフィアが出席できなかった授業の内容が分かりやすく纏められていた。セドリックが書いてくれたのだろうか。あんなに忙しいセドリックにも心配どころか迷惑までかけてしまったとソフィアは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「ソフィア! スネイプに喧嘩売ったんだって?」

 フレッドがカーテンからこっそりと入り込んだ。顔中包帯で覆われたソフィアを見て、痛そうに顔を歪める。ソフィアはそれよりも、フレッドの手にトイレの便座やクソ爆弾がないことに安堵した。明らかに、見舞いに相応しくない物しか持ってこなさそうだ。

 フレッドはソフィアの見舞いの山から勝手にお菓子を取って口に入れながら、近くの丸椅子に座った。ベッドに肘をつくので距離が近くなる。ソフィアは自分が今、臭い軟膏に塗りたくられていたことを思い出し、離れてほしいと切に願った。

「スネイプに混乱薬をぶっかけようとして、返り討ちにあったって聞いたぜ」フレッドが楽しそうに言った。

「一つも正解がないわね」

 ソフィアはため息をついた。もしフレッドが言うようなことをしていれば、ソフィアはきっと拷問にでもかけられていたはずだ。考えるだけでも恐ろしいと身震いした。

「痕は残りそうなのかい?」

 フレッドが何気なさを装って聞いた。視線は心配そうに、ソフィアの顔や手を見ている。ソフィアは心配させないように手を振ってみせた。

「今はこの有様だけど、マダム・ポンフリーが痕が残らないよう治してくれるって仰ってたわ」

「そりゃあ、よかった!」

 フレッドは今度こそ安心したように、満面の笑みを浮かべた。

「面会はダメだと言ったでしょう! こっそりと入るだなんて、あり得ませんよ!」

 カーテンが突然開き、マダム・ポンフリーが目を吊り上げて言った。フレッドは追い立てられるように医務室から出ていった。再び一人になったソフィアは、お見舞いの山にものが増えていることに気づいた。

 小さな掌サイズのアナグマの置物だ。フレッドが持ってくるお見舞いの品のチョイスにしては、大変可愛らしい。これを渡すためにわざわざ来たのだろうか。なんだか面白くなって、ソフィアはくすくす笑った。

 さて、試験は近づいているのだからこんな寝ている場合ではない。ソフィアは先ほど閉じたセドリックから貰ったノートを開き、勉強を始めた。

 ソフィアは試験が近づくたびに真面目な友人に囲まれて本当に良かったと実感する。もし、グリフィンドールに組み分けされてフレッドやジョージと連んでいたらと思うと、ソフィアはありもしない自分のテスト結果を想像して青ざめた。

 うだるような暑さの中、筆記試験の大教室はことさら暑かった。試験用に、カンニング防止の魔法がかけられた特別な羽根ペンが配られた。

 最後の試験は魔法薬学の実技試験だった。スネイプは、「混乱薬」をまたテストに出した。ソフィアの火傷はこの前癒えたばかりだ。他の実技試験よりも殊更緊張しながら、必死になってソフィアは取り組んだ。スネイプがすぐ後ろに回ってまじまじと監視するので、心臓に大きく負担をかけた。

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