immature love | ナノ


▼ 英雄の転落6

「なにそれ。自分を慰めてって言いたいわけ?」ソフィアは語気を強めた。「この子達の存在は完全に無視ってわけ? 挨拶もなし?」

「グリフィンドールの問題だろ。口出すなよ」

 イライラしたような口調のソフィアに、フレッドは噛みつくように言い返す。こういったお互いの意見が食い違う時、昔から双子対ソフィアと二対一になって負けていた。ビルやチャーリーがいれば必ずソフィアの味方していたためお互い様とも言える。それでも、二対一でも、口喧嘩だけなら相応に渡り合えるくらい、怒った時のソフィアも口達者になる。いつもと違うソフィアの口調にハリー達はオロオロしている。

「仲間思いのグリフィンドールってほんとに素敵よね。ね? ジョージ?」

「お優しいだけのハッフルパフには分からないさ」

 ソフィアの嫌味にジョージが苛々しながら返した。フレッドは「お前らは一晩で一五〇点も失う前に、そんな点もないよな」とソフィアを睨んだ。

「違うわ、真に仲間思いのだけよ。いつもお互いを高め合える寮だわ。グリフィンドールは仲間思いなんて形だけ! 自分にとって都合のいい相手にだけよ!」

「間抜けに仲良しごっこがやりたいならそちらだけでどうぞ」

「俺らは仲良しごっこだけじゃない、勝利のために戦うチームなんだよ」

「そう言うなら、あなた達なんて今まで一人で五〇点以上減点されてるでしょ! 自分を棚にあげるのも良い加減にしなさいよ!」

「俺らは何も一晩で引かれたわけじゃない」

「じわじわ点数下げてるのが足手まといになってるってお気づきじゃないようね。本当あなた達って最低!」

 ソフィアが癇癪を起こしたように金切り声をあげて叫んだ。座っていたハリーの腕を掴んで引っ張り起こす。引きずるように立たされたハリーは目を白黒させてソフィアと双子を交互に見つめているが、ソフィアは頭に血が上っていて気付かなかった。

「ハリーと同じ寮になりたいって誰よりも思ってたのは私なのよ! 何年もファンなの! そんな私の前でこれ以上ハリーを酷い目に遭わせるつもり? あんた達、いい加減にしなさいよ!」

 沈黙がその場を包んだ。ソフィアの思わぬハリーファン宣言に、当のハリーは目を白黒させたのち、まるでロンのように耳まで赤くした。ロンは、あーあと言いたげな顔で叫んだソフィアを見つめている。ソフィアは、怒りで体を震わせ、息も荒くなっていた。

「あ、有難う……ソフィア。でもこれ以上は……」

 もごもごとハリーが呟くので、我に返ったソフィアがハリーに負けないくらい顔を赤くする。フレッドとジョージは、その一部始終に黙り込んでいたのも束の間、顔を見合わせてすぐに吹き出した。

「お前、私情で他の寮に口出ししすぎ。ハリーじゃなくてロンだったら、俺たちにこんな喧嘩売ってこないだろ」

 涙をぬぐいながらヒイヒイと笑うフレッドが言う。ソフィアは無言で、返事をしないまま足早にその場を立ち去った。嵐のような人だねと言うネビルの呟きに一年生達は一同頷く。

「ハリー、俺たちは許したわけじゃないぜ」

「責任感じてるなら、次の試合も開始直後にスニッチ掴めよ」

 フレッドとジョージは少し柔らかな声音が後ろから聞こえてきて、ソフィアは良かったと安堵した。ただ、恥ずかしさで暫くグリフィンドール生と顔を合わせられそうにない。顔を真っ赤にしたソフィアを、ハッフルパフのテーブルでセドリック達が苦笑いを浮かべながら待っていた。

「セド……ハリーに昨日のこと言いそびれちゃったわ」

「僕から言っておくから大丈夫だよ」

 セドリックが呆れたような笑顔を浮かべた。


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