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▼ 英雄の転落5

「こんなのって酷いわ。皆の気持ちも分かるけど、他の寮の得点を減らした人の陰口を皆で言うなんて間違ってる」

「その通りだね」

 ソフィアの若干憤った口調に、セドリックは頷いた。ギリアンやレティ、マルタも一様に頷く。

「……ポッターの悪口を言うんじゃなくて、お腹を膨らませに、席に着かない? お腹減っちゃった」

 マルタが眉を下げ余りにも悲壮な表情で言うものだから、レティはくすくす笑ってそうねと頷いた。ソフィアはハリーたちの様子を見たいからと手を振ってその場を後にした。目指すは、長テーブルの隅で縮こまっているハリーたちだ。

「ハリー、ロニー、ハーマイオニー! 久しぶりね」

「無駄に語呂がいいからって、わざと名前呼んでるでしょ」

 ロンが本当にソフィアってと呆れたように呟きながら目をぐるりと回した。他の面々は軽口を言う元気もないのか、「久しぶり……」と声を小さく返事した。

「ふふふ。皆一晩でやらかしたものね。元気なくたって仕方ないわ」

 笑いながらソフィアがハリーの隣に座る。ハリーは可哀想なくらい肩を落として縮こまるので申し訳なさが募る。ソフィアは励まそうとわざと明るく笑ってハリーの肩を叩いた。

「ハリーが自分で稼いだ点を自分で失ったようなものでしょ! 別に良いじゃない!」

 プラマイゼロねと笑うソフィアにつられて、ハリーも少しだけ微笑んだ。ハーマイオニーは「私五〇点も稼いでないわ」と益々落ち込み、名も知らないもう一人の丸顔の男の子なんて溶けて机と同化しそうな勢いで突っ伏している。

「別に、一年生はもっと気楽に楽しめば良いのよ」

 ソフィアはにっこりと微笑んだ。流石に五〇点とはいかないが、大きな減点をされたことはソフィアにも経験がある。一年生の頃、スネイプに注意され、泣きながら謝った際に「いつまでメソメソと態とらしく泣き真似をするんですかな、ハッフルパフから二〇点減点」と言われたのだ。

 その時のハッフルパフにとって、二〇点は今回のグリフィンドールの五〇点と同等の価値があった。だが、上級生も同級生も怒らず、励ましてくれた。厳しい注意もあったが、みんな最後には笑顔で挽回するために頑張ろうと言ってくれるのだ。セドリックなんてその日以降無口な彼に珍しく積極性を発揮し授業で答えて点数を荒稼ぎしてくれた。

「私も一度で二〇点減点されたことがあるの。それも、泣いただけで」

 くすくす笑いながらソフィアが告げれば、なんでと不思議そうに八つの目がコチラを向いた。詳細を告げれば、やっぱりスネイプは先生とは思えないとハリーは憤慨しているし、ロンは幼地味のお姉ちゃんのような存在がこのような失態を犯していたと知って面白そうにしている。丸顔の男の子(ネビルと言うらしい。)は、「僕もうスネイプの授業受けたくない」と酷くおびえているので、悪いことをしたとソフィアは若干申し訳なさを感じた。励ますどころではない。

「挽回すれば良いだけなのよ、そんなに落ち込んだり謹慎みたいな事はしちゃダメ」

 ソフィアはにっこりと微笑んだ。特に、落ち込んだ様子のハリーとハーマイオニーに向けて。彼らはこれまで点数を沢山稼いで来たのだから、前以上に頑張れば挽回できない失敗ではないのだ。

「よお、ソフィア」

「おはよう、どうしたの?」

 むすっと機嫌が悪そうな顔をしていたフレッドとジョージは、ソフィアの両腕を掴むと連れ出そうと引っ張った。そこまで強い力でもなかったのでソフィアはそれを振り払う。

「何かあるの?」

「ポッターを励ます場面じゃないだろ、相手間違えてるぞ」

 不満そうなフレッドの言葉に、今度はソフィアが不機嫌そうに顔を歪めた。

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