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▼ 英雄の転落4

「石はダンブルドアが守っているはずだ、それに誰が狙っているかも先生ならご存じだろう。ハリーはこれ以上首を突っ込まないで、城の中で安全に過ごすべきだ」

 セドリックがきっぱりと言い切った。ソフィアも頷く。セドリックの言う通りだ。ハリーが先日のようにスネイプの跡を追って、今日のソフィアとセドリックが遭遇したような事件に巻き込まれていた可能性だってある。

 ソフィアとセドリックはただの生徒だから襲われずに済んだだけかもしれない。下手にホグワーツの生徒が行方不明になれば警備が手厚くなるだけだ。

 しかし、ハリーだったらどうなっていただろうか。ハリー・ポッター。生き残った男の子。もし、仮にさきほどの影が名前を呼んではいけないあの人だったとしたら、ハリーの命はなかったはずだ。

「明日にでも、ハリーに言わないと」

 ソフィアは頷いた。城の正面玄関が見えてきた。石段を上る。足が鉛のように重く感じた。

「そうだね。そういえば、フィレンツェが言ってた『彼』って誰だろう。ソフィアは心当たりある?」

 セドリックが不思議そうに首を傾げている。その様子にソフィアは首を振りながら、ハッフルパフリズムで樽を叩いた。

「全く。誰かと勘違いしてたのかも」

 現れた入口から談話室へと進む。談話室に着くと、もう寝ようとセドリックは早々に会話を切り上げた。就寝時間前に間に合ってよかったとセドリックは茶化して言った。

 ソフィアは何気なさを装って、セドリックに手を振ってから急いで自分の寝室に飛び込んだ。窓ガラスに映った父親譲りの瞳が、同じ瞳が、ソフィアをじっと見つめ返す。心臓が早鐘のように打っている。フィレンツェは、あの場でソフィアにだけ未来のことを聞いた。きっとソフィアが未来を視る力を持っている、もしくは持っている可能性があると知っていた。ソフィアが誰かと同じ目をしていると言っていた。

 『彼』は、もしかして、ソフィアの父、アルバータ・マッキノンではないだろうか。

 ソフィアは寝ぼけたままレティとマルタに連れられ朝食を食べに大広間へ行った時、広間の様子がいつもと違うことに気づき漸く目が覚めた。

 ひそひそと囁き声が、まるで一つの音楽のように響き渡る。グリフィンドールは特に動揺しているのだろう。みんな所狭しと動き回っては、なにやら話し込んでいる。フレッドとジョージさえ険しい顔をしてリーや他の友人と話していた。

 彼らの視線の先を辿れば、この広間の喧騒が何を原因がソフィアたちにもすぐに分かった。寮の得点を表す大きな砂時計で、明らかに紅が減っていた。昨日までは一番高くあった赤い宝石の山が一夜で消えていたのだ。

「ポッターが減らしたらしいぜ。他のお仲間と一緒にバカやらかして」

 広間にいたギリアンが、ソフィアたちの姿に気づくと肩をすくめて言った。冷静な口調の中に呆れが滲んでいる。ヒーローが何やってるんだかというギリアンの呟きにそんな言い方は良くないと後ろから来たセドリックが注意した。目を細めて周りを見るセドリックにつられ、彼女らはゆっくりと改めて周囲を見つめた。グリフィンドールだけじゃない、レイブンクローもハッフルパフも、皆どこか怒ったような不機嫌な表情を浮かべている。

「スリザリンが今年こそ負けるって皆期待してたからね」レティがつまらななそうに呟いた。

「少なくともハッフルパフは、お陰様で最下位を免れたって、ポッターに感謝すべきなのにな」

 肩をすくめ飄々とした口調で言ったギリアンを慌ててレティが口を抑える。周りに聞かれていないかと慌てて周囲を見渡した。確かに、グリフィンドールが最下位に落ちたおかげでハッフルパフは今や三位だ。しかし、こんな形で勝ちたくはなかったとソフィアは唇をかんだ。


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