immature love | ナノ


▼ 英雄の転落1

 森での遭遇からしばらく経ち、クィレルはますます青白く、ますますやつれて見えた。スネイプの目的が何であろうと、スネイプからの脅迫に耐えていることは明白だった。応援していることを伝えたいのか、ハリーたちがクィレルに不自然に明るく接している様子を、ソフィアは度々目撃した。

 クィレルが気がかりであることは間違いないものの、ソフィアはそれよりも優先して取り掛からなければならない問題がすぐそばで起きている。なぜか、クィレルと連動するようにセドリックも日に日にやつれていくのだ。ソフィアたちが理由を尋ねても、セドリックは困ったように眉を下げて首を振るだけだった。彼がこなしている激しいクィディッチの練習や、常人とは思えない課題の量も、特に理由ではないことだけは確からしい。

「お守りがないんだ……」

 ある日、ソフィアが今日こそは白状させると鬼気迫る勢いで問いただすと、セドリックが落ち込んだ様子でとうとう白状した。試合で負けた時以上に落ち込んでいるのではないだろうか。俯いてうなだれている。

「思い当たる場所はないの?」

 ソフィアはできる限り優しい声音で聞いた。自分たちがプレゼントしたものをこんなに必死に探してくれていることが、ソフィアはうれしかった。

「思い当たるところは全部、探しつくしたよ。ユニフォームを洗濯に出してたから、ポケットに入ってると思ってたんだけど……」

「期待が外れたってわけね」ソフィアがセドリックのセリフの続きを引き取った。

「森は? 前にユニフォーム姿のまま森に行ったじゃない」

 ソフィアの提案に、セドリックは名案だと言わんばかりに目を輝かせた。

「まだ探してなかったよ」

「セドリックにしては、抜けてたわね」

 ソフィアなら真っ先に思い浮かぶ場所が、どうやらセドリックの頭から抜け落ちていたらしい。一筋の明かりが差し込んだと言わんばかりの様子に、ソフィアは笑った。

「今日の放課後に行ってみるよ」

 セドリックが目を輝かせて校則を破ろうとするなんて、明日は槍が降るに違いないとソフィアは思った。

「私も行くわ。私も行った場所だし、二人で探した方が早いわよ」

 ソフィアの提案にセドリックは渋ったが、しつこく食い下がると頷いた。セドリックは、ますます激しくなったクィディッチの練習に加えて、大量の授業の課題までこなしている。彼の時間が足りないことは、ハッフルパフ生なら誰もが知っていることだった。ソフィアは少しでも彼の助けになりたいと思っていた。(課題を手伝いたいとは全く思わなかった。残念なことに、ソフィアは自分の課題さえ猫の手を借りたいほどだった。)

 放課後、ソフィアとセドリックは森に入った。まだ日は落ちていないのに森の中は暗い。生い茂った木々が、日差しを拒んでいるようだった。

「ブナの木があった場所が怪しいんだけどな」

 セドリックのつぶやきに、ソフィアは目を丸くした。

「よく覚えてるわね。私ちっとも覚えてなかったわ」

「覚えてるからついてきてくれたのかと思ってたよ」

 セドリックは驚いたような顔をしていた。手伝いたかっただけとソフィアが笑うと、セドリックは申し訳なさそうに謝ってから、嬉しそうに笑った。セドリックの先導で、ブナの木のふもとにたどり着いた。落ち葉が積もっていて、探すのはなかなか難しい。ソフィアは杖で風を出して落ち葉を避けた。

「きりがないわね」

 落ち葉とともにお守りさえ飛ばしてそうな勢いで風を出すソフィアに、セドリックは笑って杖を構えた。


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